65歳年金暮らしの母がアパートからの立ち退きを打診され、別の賃貸を探しても入居拒否されてしまいます。息子の私にできることはありますか?
Aさんは40歳の会社員、妻と子がいます。夫に先立たれた65歳年金暮らしの母が、アパートの建て替えに伴い立ち退きを打診されていて、別の賃貸を探しても入居拒否されてしまうとのこと。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算 Aさんは母のためにできる限りのことをしたと思うのですが、家族は同居を希望しておらず、どうすればいいかわからないそうです。何か手助けできる方法はあるのか、FPがアドバイスします。
ひとり暮らしの高齢者の割合
日本は、超々高齢社会になり、65歳以上の高齢者(以下「高齢者」といいます。)人口は、2023年9月15日現在の推計で3623万人となりました。総人口に占める割合は、29.1%で過去最高となりました※1。 高齢者のいる世帯は、2021年現在2580万9000世帯で、全世帯(5191万4000世帯)の49.7%です。 高齢者の男女ともにひとり暮らしの割合が増加傾向で、1980年には男性4.3%、女性11.2%でしたが、2020年では男性15.0%、女性22.1%となっています※2。ひとり暮らしの高齢者の増加の原因としては、生涯未婚率や離婚率の上昇、少子化や核家族化、高齢化など考えられます。
高齢者が賃貸を断られる理由
2023年10月の日管協短観※3によると、貸主の高齢者入居受け入れに対する拒否感は下記のグラフのようになっています。
全国では、「拒否感なし(以前と変わらず拒否感はない+以前は拒否感があったが現在はない)」は74.3%で、「拒否感が強い(以前と変わらず拒否感が強い+以前より拒否感が強くなっている)」は8.2%となりました。 エリアでみると、首都圏では「拒否感なし」の比率が特に高く85.4%となっていますが、関西圏では「拒否感なし」と「拒否感強い」がそれぞれ9.9%と11.4%とほぼ同等となっており、地域差が見られます※3。 高齢者が賃貸を断られる原因としては、次のことが考えられます。 <家賃> 高齢者は、収入が年金だけの場合が多く、貸主としては毎月家賃をきちんと払ってもらえるのか不安に感じます。 <健康> 高齢になると心身ともに衰えてきます。物忘れも増えてきますので、水回りや火元の管理がきちんとできるか、耳が遠くなるのでテレビの音量が大きくなり隣近所の人に迷惑をかけないか気になるところです。また認知症なり、近所を徘徊したり、ゴミ屋敷になったりするリスクも起こり得ます。 <孤独死> 高齢になると亡くなるリスクが高まります。身内がはっきりしない場合は、遺品処理に手間がかかります。また遺体の発見まで時間がかかった場合は、特殊清掃をしなければならなくなります。事故物件としてSNSで広まると資産価値が下がり、新たな入居者を見つけるのに苦労する場合もあります。