中国・世界最大の素粒子衝突型加速器2027年着工
【東方新報】最近発表されたプロジェクト報告書によると、中国は第15次五か年計画に合わせ、「円形電子陽電子衝突型加速器(CEPC)」の建設を2027年に開始する。 およそ364億元(約8004億6148万円)と見積もられるこのプロジェクトは、欧州の170億米ドル(約2兆7163億円)規模の「円形衝突型加速器(FCC)」よりも建設費も運営費もかなり安い。英科学誌「ネイチャー(Nature)」によると、欧州の設備は、もし政府の承認が得られれば、30年代には建設が開始される見込みだという。 中国のCEPCは、12年に中国の素粒子物理学コミュニティから提案された円形ヒッグス粒子(万物に質量を与える検出困難な素粒子)ファクトリーだ。 中国が主導する周長約100キロの円形地下トンネルに設置されるこのプロジェクトは、電子ビームと陽電子ビームを別々のビームパイプで逆方向に循環させる二重リング衝突型加速器で、検出器は二つの接点に設置される。 「これは高エネルギー物理学の世界戦略プランの重要な構成要素である。完成すれば、世界の科学者の相互協力が促進され、物質、エネルギー、宇宙の基本的な性質の理解が進む」、6月3日に発表されたプロジェクトの「技術設計報告書(TDR)」はこう述べている。 1000ページを超えるこの報告書は、円形衝突型加速器に基づくヒッグス粒子ファクトリーとしては初めてのものだ。 ヒッグス粒子は、全ての基本粒子の中でユニークかつ基本的な位置を占めている。ヒッグス粒子は他の全ての粒子に質量を与えており、ヒッグス粒子の質量は我々の現実を構成する他の全ての粒子に直接関係している。したがって、この粒子は、宇宙の基本的性質をより深く探究するための最良の窓口だと、世界の物理学者たちは考えている。 報告書によると、CEPCチームは、25年頃に加速器、検出器、エンジニアリングを含む「CEPC提案」を中国政府に提出し、採用されることを望んでいる。CEPCの建設は27年頃に開始され、8年かけて35年までの完成を予定している。 運転開始後の暫定的な運転計画では、ヒッグス物理探究に特化した10年間の運転期間と、それに続くZモードとWモードでのそれぞれ2年間と1年間の連続運転が計画されている。 チームは15年2月にサイト選定を開始した。河北省(Hebei)秦皇島市(Qinhuangdao)と雄安新区(Xion’gan)、浙江省(Zhejiang)湖州市(Huzhou)、吉林省(Jilin)長春市(Changchun)、湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)など、さまざまな地域でCEPC候補地の予備地質調査が行われた。これらの候補地はすべてCEPCの建設条件を満たしているとのことだ。 中国科学院高エネルギー物理学研究所の王胎芳(Wang Yifang)所長は3月、「このような大規模な科学施設を独自に設計できることは、中国の科学者の能力を示すものだ」と環球時報(Global Times)に話していた。 王氏によれば、次のステップは、工学的設計を進め、完成したコンポーネントを統合することだという。王氏は「我々はすでに一つのプロトタイプを完成させた。次のステップは、個々の製品を大量生産する方法を見つけ出すことだ。さらに、この設備が最適な性能と費用対効果を達成できるよう、幾つかの重要な技術の詳細を綿密に研究し続けていく」と話している。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。