長野県が職員11人に損害賠償請求へ 異例の方針に知事「断腸の思い」
長野県内の森林組合の補助金不正受給をめぐり、担当の県職員にも責任があったとする県が関係職員11人に8000万円余を上限として損害賠償請求する方針を固め12日、阿部知事が会見で明らかにしました。これまでに弁護士などによる検討委員会が県職員への損害賠償請求が可能と判断したのを受け、この日、県監査委員に監査請求をしました。自治体が職員に損害賠償を求めるのは極めて異例。多数が賠償請求を是とする県内世論の一方、職員の士気にかかわるとの指摘や反発もあり、問題は尾を引きそうです。
森林組合が補助金を不正受給
国や県の補助金を不正に受給していたのは同県大町市の大北(だいほく)森林組合。県によると10年ほど前から数年間にわたり、ほぼ未施工の森林作業道の工事336件で4億7000万円余の補助金を得ていたほか、間伐などで実施時期が適合しないなどの例が多数に上りました。 県が公表している調査結果によると不正受給額は国、県分を含め16億円余で、このうち時効の分を除く約9億6500万円について、県は同森林組合に返還を請求。同組合は県の指導で長期にわたる返済計画を進めています。 国の補助金返還命令が出たため長野県は昨年9月、11億3600万円を国庫に返還。不適切な事務処理への制裁として、国は「加算金」3億5300万円を長野県に課しました。 2015年には長野県は、偽って国の補助金の交付を受けたとして補助金適正化法違反で同組合と元役員を告発。今年3月、組合役員に懲役5年の実刑、組合に罰金の判決が出ています。 一連の経過の中で不正な補助金申請に対し、関係の県職員が適切にチェックしなかったり補助事業の現場の確認を怠るなど、ずさんな対応があったのではないかとの指摘や、なれ合いと見られる事務処理はなかったのかといった疑問が関係者や県民から噴出。住民監査請求を受けた県監査委員が今年2月、県に対し「国への加算金納付による損害の県職員への賠償請求について9月12日までに検討し、賠償責任が認められる職員について厳正に対処するよう」勧告しました。 これを受け県は弁護士らによる「法的課題検討委員会」を設置。委員会は8月、国から課せられた加算金3億5300万円の県の持ち出し負担に関連して、補助金不正申請に関係した出先機関の課長や係長、担当職員11人に合わせて最大1億5300万円を損害賠償請求できるとの判断を示しました。