長野県が職員11人に損害賠償請求へ 異例の方針に知事「断腸の思い」
「士気に関わる」慎重論も
会見で阿部知事と県側は、11人の県職員のうち不備な申請などを見逃した重大な過失があったとして課長、係長ら4人に合わせて1100万円、他の職員7人に合わせて7200万円、森林組合の元役員に約8400万円、森林組合に約600万円の損害賠償を請求する方針を公表。 また、時効で組合に返還請求できなかった国への返還分約1億2600万円については検討委員会の判断に沿って森林組合の元役員に約4600万円、組合に約6100万円を請求する方針を示しました。 阿部知事は「県職員のトップであるとともに県民の代表でもある立場でこのような判断をしなければならないのは断腸の思い。熟慮を重ねて判断した。法的課題検討委員会からは請求の範囲について報告をいただき、しっかり検討して今回取りまとめた。県民の理解が得られるよう対応していきたい」と述べ、知事が月額10%を3か月、副知事2人は同2か月の減給とする処分の条例案を9月県議会に提案する考えを示しました。 県は地方自治法で、県費の支出に関わる「財務会計職員」が故意または重大な過失により県に損害を与えた場合はその損害を賠償しなければならない――としている規定に損害賠償請求の根拠を置いています。また、財務会計職員以外で不正請求に関与した職員は民法の規定によって賠償の責任が判断されるとしています。 これについて県内では県民の多くが賠償請求を支持するとの世論調査の結果がある一方、職員への賠償請求は士気にも関わるから慎重にすべきだとの主張や、「これでは安心して働けない」との反発もあり、監査の結果を受けて県が賠償請求を行う段階であらためて論議を呼びそうです。 現在2期目の阿部知事は、長野県世論調査協会の8月の調査でも85%の高い支持率を示しています。その一方で「安定県政」が行政の現場で緊張感を欠いた判断やなれ合いの雰囲気を広げていないかとの懸念も生じています。補助金の巨額不正受給が長い間放置されていたこと自体、本来厳正であるべき行政の緩みを象徴しており、県政の引き締めをどう図るかが今後問われてきます。
-------------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説