「キティ」に続く多様なキャラ強み、サンリオ株は年初来で2.5倍に
サンリオの今期売上高予想は1306億円と前期比で31%増加する。店舗やテーマパークでインバウンド(訪日外国人)を含めて顧客が増加、ライセンス事業も複数キャラ展開戦略が奏功して特に北米や中国でロイヤルティー売り上げが増えたとしている。
韓国NH投資証券の日本株アナリストであるキム・チェユン氏は、韓国アイドルや韓国で人気ブランドのアディダス、バレンシアガとの協業でサンリオの認知度が非常に上がったとして、韓国で引き続き高い実績を出す可能性が高いと予想した。
同時にリスク要因は「キャラのライセンス依存度が高いこと」として、グローバルマクロ的な要素が株価にネガティブな影響を及ぼす可能性がある点には要注意だとした。
「キティ」後
複数キャラ戦略が奏功して、物販・ライセンス事業の売上総利益に占めるキティの構成比率は前期で30%と10年前の76%から半分以下に低下した。
キティに詳しい関西国際大学の清水美知子教授はサンリオについて「近年は推し活の広がりとともにキティ以外のキャラが大きく成長している」と語った。
22年7月からサンリオ株を保有し始めたアセットマネジメントOne海外消費関連日本株ファンド株式運用グループのファンドマネジャー吉澤朋哉氏は、サンリオは10-14年辺りまで増益だったが、キティブランド乱用と自社物販拡大という戦略を進める過程で在庫ロスなどが発生して14年以降はつまずいたと指摘した。今のサンリオはキティ以外にも収益源を広げている。
サンリオ株は11月27日、一時17%安と急落した。主要取引銀行や経営陣が保有する株式を売り出すと発表して需給悪化を懸念する動きが一気に強まった。それでも翌日には一時9%高となり、その後に急落の穴はすぐに埋まった。
今期予想株価収益率(PER)は向こう12カ月のブルームバーグ・コンセンサスで33倍、任天堂の29倍やTOPIXの15倍に比べてサンリオ株は割高だ。
農林中金全共連アセットの中尾氏はサンリオ株について、投資指標のマルチプル的には過去の水準を超えているとして「1株利益(EPS)の成長予測が難しい面もある」と指摘した。同時にIP事業の世界的普及ストーリーが崩れない限り、高いバリュエーションは許容されると評価した。このストーリーを維持するためには複数キャラの一層の活躍が不可欠だ。
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Haruka Iwai