ヨシタケシンスケ 絵本作家デビュー10周年 大切にしていることは「人の意見を聞かない」
■作品はテーマから「どういうお話が一番ふに落ちてくれるだろう」
これまで視覚障害をテーマにした『みえるとか みえないとか』や、地図をテーマにした『ぼくはいったい どこにいるんだ』など、子どもだけでなく、大人も“気づかされる”、“考えさせられる”絵本を数多く発表してきたヨシタケさん。どのように作品を制作しているのでしょうか? ――作品の作り方を教えてください。 僕の場合はテーマが先にあって、『ぼくのニセモノをつくるには』(2014年)という絵本を描いたんですけれども、“アイデンティティー”、「自分とは何か」をテーマにする本を描いてくれっていうお題があったんですね。でも自分が子供の頃を考えた時に、自分とは何かなんて考えていなかったんですよ。だから読んでくれないだろうと思ったんです。では、どういうお話だったら「それだったら考えなきゃしょうがないよね」ってなるのかなというのを考えたすえに、(絵本に登場する)男の子が宿題とか家の手伝いとかするのが嫌で、自分の偽物を作って自分が楽がしたいとロボットを買ってきて、「全部そいつにやらせてしまおう」と計画をするんだけれども、ロボットから「あなたのことを知らないとあなたのニセモノになれないから、あなたの詳しい情報を教えてくれ」と言われたら、言うしかないですよね(笑)そういうことで「自分とは何か」「他の人と何が違ってどこが一緒なのか」っていうことを考え始める。僕の場合はお話を伝えたいというよりは、そのテーマについて読んでくれた人が自分のこととして考えるためには「どういうお話が一番ふに落ちてくれるだろう」「納得してくれるだろうか」っていうそういう順番でものを考えます。
――絵本を制作する上で大切にしていることはなんですか? 僕の場合は人の意見を聞かないことです(笑)色々な意見を聞いて、反映させる作家さんもいらっしゃるんですけど、僕は子供の頃の自分が喜んでくれるかどうか、5年後、10年後の僕がちゃんと喜ぶかどうかということを第一に作っているので、「自分だったらこういうふうに言ってほしいんだけどな」という思いで作っているんです。もちろん編集者の人の意見は聞くんですけど、なるべく最初に作ったテーマとか、「だって僕はこう思ったんだもの」っていう形にきれいにまとめたいなと思っています。