EV普及に欠かせない「EV用タイヤ」 普通のタイヤとどう違うのか?
EVに求められる「静粛性」
さらに、「騒音低減」もEV用タイヤがエコカー推進に貢献する理由として挙げられる。EVはエンジン音がないため、タイヤから発生する騒音がより目立つ。このため、騒音を低減するタイヤが重要となる。 例えば、タイヤメーカー・ミシュランから発売するEV用タイヤ「MICHELIN パイロット スポーツ イーブイ」は、静粛性の高いコンパウンドや内部に特殊フォームを組み込んでいるため、車内への騒音を約20%低減することが可能だ。EVの快適なドライビング環境をアシストしてくれるのだ。静かな走行音は乗員だけでなく、周囲の環境にも配慮する点で魅力的である。 また、騒音の低減は都市部や住宅街などの静かな環境での走行に適しており、地域社会との調和を図る上でも重要な要素となる。このように、EV用タイヤが騒音低減に貢献することで、エコカーの普及と地球環境への配慮が促進されるのだ。
エコカー推進に必要な要素
EV用タイヤはエコカー推進の一部として役割を果たしているが、それだけでは普及への道のりは遠い。 EVの普及が難しい原因は複数存在する。まず第一に挙げられるのは、充電インフラの不足だ。現在の充電ステーションの設備はまだまだ整っておらず、特に長距離移動をする際には充電ポイントの不足が深刻な問題となる。 そのため近年では、高速道路のサービスエリアや一部のコンビニなどで急速充電ステーションの設置が進められている。とはいえ、いまだに充電インフラの整備が進まない地域では、航続距離をなかなか伸ばしにくい課題が残っている。 また、EVの価格も普及を阻む大きな要因となっている。現在のEVは、政府からの補助金や減税を利用しても、バッテリー技術の高コストや車両の製造費用の高さから、一般消費者にとって手の届きにくい価格帯に位置している。加えて、バッテリーの寿命や性能の低下に伴う交換費用、さらにEV用タイヤも比較的高価であることから、所有コストが高くつくというイメージが根強く残っている。 そのほかにも、EVの走行性能や航続距離の向上が求められる。現行のモデルでは航続距離が限定されており、長距離ドライブや急な予定変更に対応しづらいという問題がある。近年ではバッテリーの高性能化や先述した充電スポットの増加、加えて政府の推進も相まって、少しずつ解決へ進んでいるが、時間はかかりそうだ。 なかなか解決しにくい課題点が残されているなかで、EV用タイヤは普通のタイヤよりも 「ハイスペック」 であることが求められている。EVの能力をさらに引き出し、エコカーがより便利に使えるように、各タイヤメーカーでは今後EV用タイヤの開発が望まれる。
木村義孝(フリーライター)