なぜ箱根駅伝で王座を奪回した青学大の原監督は「厚底シューズ効果」について語らなかったのか?
チーム内でも以前からナイキの厚底シューズに興味を持っていた選手がいたこともあり、全日本大学駅伝後に同シューズの使用を“解禁”。11月23日の1万m記録挑戦競技会では中村が28分31秒68で総合トップを飾ると、初1万mとなった岸本が28分32秒33、吉田、湯原、飯田、吉田、岩見、鈴木も28分台をマークする。箱根駅伝エントリーメンバー上位10人の1万m平均タイムは28分45秒36まで急上昇。出場全チームでトップに躍り出た。 原監督は明言しなかったが、箱根駅伝でもナイキ厚底シューズの“威力”は明らかにあった。 2位に終わった東海大・両角速駅伝監督は、「ウチとしては設定タイムをおおむねクリアしていて、復路優勝もした。ミスなくつなごうというのが合言葉のようにあったんですけど、爆発力に欠けましたね。特に4区吉田君が東洋大・相澤(晃)君の区間記録を更新するとは想像していませんでした。普通の駅伝をしていたら勝てない。それくらいのレベルで青学大に走られてしまいました」と青学大の走りは想定を大きく上回るものがあった。 ちなみに前回は東海大が10人中8人、青学大は10人中1人がナイキの厚底シューズ。今回は両校とも10人全員が同シューズを着用していた。 青学大と同じようにアディダスとユニフォーム契約をしている明大もナイキを履く選手が急増して、前回17位から6位に大躍進している。エース阿部弘輝(4年)は故障上がりにも関わらず、7区で区間新記録を樹立。ナイキの厚底シューズを着用して初めてのレースで快走した。 「ダメージが少ないのが僕としては良かったかな。カーボンプレートが入っているので、うまくハマると勝手に前に出される感覚があるんでけど、逆に進まないときもある。まだ感触はつかめていません。ただ走りやすい靴ではあると思います」(阿部) 前々回大会からナイキの厚底シューズを履いている東洋大・相澤晃(4年)は青学大の大躍進にシューズも大きく影響していると考えている。 「シューズの効果はもちろんあると思っています。ただタイムが出ている選手と出ていない選手はいます。青学大は年間通して長い距離をじっくりと走り込んでいますし、フィジカルのトレーニングもやっている。そういう選手が履くとタイムは出るのかなと思います。それでも4区の区間記録は20年抜かれないかと思ったのでビックリしましたね(笑)」 箱根駅伝で“最強”を誇る青学大と“最速シューズ”のコラボレーションで、学生駅伝はますます加速していくことになりそうだ。 (文責・酒井政人/スポーツライター)