なぜ箱根駅伝で王座を奪回した青学大の原監督は「厚底シューズ効果」について語らなかったのか?
レース後の囲み取材では饒舌に語っていた原監督。しかし、選手10人全員がナイキの厚底シューズである『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%』を着用していたことについて質問されると、「それはノーコメントにさせてください。走るのは選手の脚と選手の心臓。テクノロジーの進化は時代とともに当然あると思いますけど、普段のトレーニングでは、アディダスのシューズで鍛えています。選手たちは夏合宿で1000km以上走り、寮生活も毎朝5時に起きて、夜は門限22時をキチッと守って、ストイックな生活をしています。そこを強調しないといかんと僕は思いますね」とシューズについての“効果”は口にしなかった。 原監督がシューズについての言及を避けたのは理由がある。純粋にタイムの向上を「ギアの進化」で片付けられたくなかったという指導者のプライド。それと青学大は2012年からアディダスとユニフォーム契約をしているという事情があるからだ。基本、シューズは選手各自で選択できるが、ライバルメーカーのシューズはいわば、“禁断の果実”ともいえる。 今大会は210中178人(84.7%)がナイキの厚底シューズを履いて出走した。箱根駅伝ランナーにおけるナイキのシェア率は前々回が27.6%で前回が41.3%。今回はさらに倍増したことになる。青学大は吉田圭太が以前からナイキを履いていたが、他の選手はユニフォーム契約をしているアディダスを履く選手が大半だった。 ナイキの『 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%』は、反発力のあるカーボンファイバープレートを、航空宇宙産業で使う特殊素材のフォームで挟んでいるため、一般的なランニングシューズと比べて「厚底」になっている。それなのに軽く、推進力が得られるだけでなく、脚へのダメージも少ないという画期的なシューズなのだ。実はアディダスもカーボンファイバープレートを搭載したモデルを製作。全日本大学駅伝で履いていた青学大の選手もいたが、フィットしなかったようだ。