【小倉2歳S回顧】中京組のワンツー決着にみる“舞台経験”の重要性 距離延長でも楽しみなエイシンワンド
夏の2歳重賞とは
各所で行われる夏の2歳重賞はローカル開催の一番星を決める意味合いが強い。つまり、同じ舞台で新馬、未勝利を勝った馬たちがはじめて対戦する場だ。未対戦の1勝馬同士がその勝利をあげた舞台で激突する面白さがある。タイム比較、メンバー比較、ペースの差など、未対戦であっても物差しは多く、ときには前走通りの力を出せない馬などもいて、キャリアの浅い2歳戦の難しさも突きつけられる。 【新潟記念2024 推奨馬】単複回収率100%超えデータ2つに該当! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 函館6週目、札幌7週目、新潟5週目。各地の2歳Sは1カ月以上に及ぶ開催終盤にある。もちろん、同じ競馬場、同じ舞台で勝ち上がった馬たちだけの争いではなく、間隔をあけ、そこに照準を定める陣営もいて、ここの比較が難しかったりもするが、ベースは各開催での新馬、未勝利にある。6月デビューとご当地デビューの馬たちとの力関係の間には、そのコースで勝ち上がった実績と適性が上乗せされる。経験値の浅い2歳にとって、それだけ同じコースを走る利点は大きい。 今年の小倉2歳Sは、7月小倉と8月中京で勝ち上がった馬たちが中心となったが、舞台となった中京はまだ開催4週目。案の定、中京デビュー馬は1週目の新馬を勝ったエイシンワンドと2着クラスペディアの2頭しかおらず、結果はこの2頭が1、2着。新馬戦と同じ着順で決した。これを小倉2歳Sと呼んでいいのか違和感が拭えない。変則開催だから仕方ないが、同じ舞台を経験したアドバンテージの大きさを感じざるを得ない。
1400m以上でみたいエイシンワンド
勝ったエイシンワンドは1週目の新馬で前後半600m35.5-33.7のスローを番手から抜け出し、快勝。ペースが上がらない前半、最後の急坂から平坦の粘りと、中京らしさを経験していた。小倉は平坦であっても、前半が下りのため速くなりやすく、後半の粘りのニュアンスが異なる。急かさず入って最後に伸ばすのと、急かして位置をとり、粘る。好対照な適性が求められるだけに、中京の経験は終始、優位に働いた。 先手をとったのは小倉で前半600m33.4を記録した快足レイピアだが、今回のペースは34.5。ぶっ飛ばそうとしないかぎり、33秒台は出ない。これが中京芝1200m。重馬場で自然流の逃げだと、これが精一杯だろう。当然、好位にいたエイシンワンド、クラスペディアは前走より速くても、決して苦しいわけではない。4角3番手にいたエイシンワンドは外目の馬場の良いところも選べ、完勝だった。坂を上がった残り200mは11.7と時計がかかり、クラスペディアに差を詰められはしたが、前走で坂を上がってからの最後の平坦を経験しており、しのげた。後半600m34.5とさすがに新馬よりは厳しかったものの、イーブンペースへの対応も小倉組より上だった。 そうはいっても、重馬場はエイシンワンドも経験がなかった。戦前は開幕週の高速馬場のあとだけに、道悪対応に課題ありとみたが、まったく苦にしなかった。血統表を見直し、母の父タイキシャトルで納得した。泥んこの安田記念、重のドーヴィル競馬場・ジャックルマロワ賞を駆け抜けた姿が甦る。スロー~平均ペースのスプリントで2戦2勝としたエイシンワンドは今後、距離を延ばしてもやれそうだ。少なくとも生粋のスプリンターではない。父ディスクリートキャットも1600~1800mを守備範囲としており、産駒もオオバンブルマイ、キャットファイト、コンバスチョンと1400~1600mでの活躍が目立つ。まずは1400mでの走りをみてみたい。