【市川紗椰の週末アートのトビラ】横浜美術館「第8回横浜トリエンナーレ 野草:いま、ここで生きてる」をご案内
市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第22回は横浜美術館で開催中の「第8回横浜トリエンナーレ 野草:いま、ここで生きてる」を訪問しました。 【写真】横浜美術館「第8回横浜トリエンナーレ」出展作品と市川紗椰
横浜美術館のダイナミックな展示空間も、わざわざ行って味わう価値あり!
丹下健三設計の横浜美術館、開放的なグランドギャラリーは、天井の開閉式ルーバーが修理されて外光が入るように。ホール中央には、ピッパ・ガーナーの『ヒトの原型』などの立体作品を中心に、円卓の上にタブレットが並んだ『日々を生きるための手引集』のコーナーも。
サンドラ・ムジンガ『出土した葉』は、布を編み込んだ巨大な作品。近づいて中をくぐってゆくと、SF映画の風景のよう
トビラの奥で聞いてみた
展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…横浜美術館主任学芸員 片多祐子さん 市川 「野草:いま、ここで生きてる」というテーマにふさわしく、世界中で活動している性別も国籍も世代も多種多様なアーティストが集っていますね。 片多 全体では93組が参加していて、オープニングには40人を超える作家が来てくださいました。普段は会うはずのない人々が、ひと所に集まって同じ時間を共有する、これこそ現代美術の芸術祭ならではの時間だと感じました。 市川 ひとつの空間で、ひとつの目標に向かっているけれど、アーティストによって打ち出したいテーマもメッセージも全然違っていて。それがトリエンナーレらしいし、現代アート、現代社会について考える入り口にもなりそうです。 片多 社会で起きているたくさんの問題に向き合っていることで、現代の生きづらさを感じる展示もあります。ですが、訪れた皆さんには、作家たちの生きるエネルギーを見いだしていただきたい。企画側としてはそう思っています。 市川 確かに、全部受け止めようと思うと大変。今回は、文献を読めるコーナーがあったり、近づいて座ったりもできる展示があったので、作品と観る人のコミュニケーションが一方向にならず、息抜きができた気がします。 片多 色々な人が色々な角度から楽しめる回路があるといいな、と考え工夫したので、そう感じていただけると嬉しいです。この展覧会をきっかけに、自分たちの日々の暮らしを見つめ直してみてほしい、そんな気持ちも込めています。