WBSS決勝で井上尚弥がドネアに勝ったら1億円「勝者には8桁(10億円)の価値がある」
記者会見の後には、ルールミーティングが行われたが、試合で使用するグローブの選択を巡ってちょっとしたハプニングがあった。井上尚弥は、今回の試合のガウン、トランクス、シューズのトータルカラーに合わせて特別注文で作られたグレーと黄色のツートンカラーの日本製「ウイニング」のグローブを選んだが、米国製「エバーラスト」のグローブを選んできたドネア陣営の父のシニア・トレーナーとケニー・アダムス・トレーナーの2人が「親指の手元部分がしっくりこない」とクレームをつけて交換を要求したのだ。 近年、タイトル管理者と相手陣営公認のもと、それぞれが希望するメーカーのグローブを使用できるようになっており、ドネア陣営も自分たちで用意してきたはずなのだが、それを「気に入らない」とし、ウーバーリの予備として用意されていた同じく日本製「ウイニング」の赤のグローブを採用することになった。 井上陣営にしてみれば、同じ日本製のグローブになったことはマイナスではない。ドネア自身は「グローブ選定はトレーナーに任す」と、その場にはいなかったが、それほどドネア陣営が“モンスター井上”を相手に神経質になっている証かもしれない。 この日、来日したWBSS代表のカレ・ザワーランド氏は、この試合を「パンチャーのドネアはさまざまなタイトルを奪取してここまで来た。階級を落として今一度強さを見せている。井上尚弥は、ここ2年で世界を一番震撼させたボクサー。秒殺してきたことも話題になっている。ロマチェンコ、“カネロ”アルバレスに並ぶパウンド・フォー・パウンド。誰が一番強いのかを決める試合になる。楽しみと期待しかない」とした上で、気になるファイトマネー&優勝ボーナスについて注目発言をした。 「ハッキリと金額を言うことはできないが7桁だ。政治家のような言い方になってしまうが、それで理解してくれないか」 7桁とは、ズバリ100万ドル。約1億円である。 5階級制覇王者のドネアは、過去にギジェルモ・リゴンドー(キューバ)とのWBA、WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦などで1億円以上のファイトマネーを稼いでおり、決して破格の金額とは言えないが、日本の軽量級のファイトマネーとしては異例だろう。 ザワーランド氏は、さらにこう続けた。 「この大会は、世界で誰が最強かを決めるもの。だから、この試合の勝者には、実は、8桁の商品価値があると思う」 8桁……約10億円の価値――。 それは優勝者の今後も含めての見通しである。 井上尚弥は、この試合の結果次第で、世界的プロモート会社のトップランク社と正式契約を結ぶことになっている。世界的なビッグネームであるドネアにインパクトのある試合で引導を渡せば、海外マーケットにおける井上尚弥の価値はグンと上がる。そこにスポンサーフィーなどの金額をプラスしていけば、ザワーランド氏が断言するミドル級のトップボクサークラスとなる“10億円ボクサー”への道は決して夢物語ではない。 記者会見で、井上尚弥は「ボクシング界は今4団体あるが、世界最強を決めるトーナメントに日本代表を背負うつもりで出てきた。決勝に勝たないと、今後、日本人がここまで上ることはできない。突破口として優勝する。この先、見てみたい景色は山ほどある」とも言った。その景色のひとつには、ザワーランド氏が言う「10億円ボクサー」という目標も含まれている。 記者会見場には、勝者が手にできる巨大な金色のモハメッド・アリトロフィーが持ち込まれていた。それを見て井上尚弥は「初めて目の前で見たけど素晴らしいですね」と目を輝かせた。 今日、6日には午後1時より都内で前日計量が行われ、いよいよ7日午後9時頃に真の世界最強を決める戦いのゴングが鳴る。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)