誤情報出さずセキュリティも確実…サムスンが静かに育てる「AIアシスタント」
サムスン電子が8回目となる人工知能(AI)フォーラムを非公開に転換して、「HBM以降」に向けた長期戦略を議論した。日常の中で個人用人工知能(AI)実現の突破口をAI半導体とナレッジグラフで、ハードウエアとソフトウエアの両方で突き抜けるというビジョンだ。 ◇個人用AI核心技術持つ権威、基調演説 サムスン電子は4日から2日間にわたりソウルR&Dセンターで「サムスンAIフォーラム2024」を進めたと明らかにした。2017年に始めたこのフォーラムは、昨年は1000人以上が現場で参観したが、今年は内部と産学界関係者だけを招いて非公開で開催した。フォーラム初日の4日にはサムスン総合技術院(SAIT)の主管でAIと半導体の接合を、5日にはサムスンリサーチの主管でAIソフトウエアに焦点を当てた。 今年はナレッジグラフの権威である英オックスフォード大学のイアン・ホロックス教授が基調講演に出て目を引いた。毎回フォーラムの基調講演はAIの権威が担当してきたが、サムスン電子と協力するカナダ・モントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授、メタ首席科学者のニューヨーク大学のヤン・ルカン教授がほぼ毎年演壇で最新のAI研究動向と示唆点を共有した。 ところが今年は彼らに加え、次世代AI検索の核心技術に挙げられるナレッジグラフ専門家が演壇に立ったのだ。ホロックス教授が2017年に創業したオックスフォード・セマンティック・テクノロジーズ(OST)はナレッジグラフの基本技術を持つ会社で、7月にサムスン電子が買収した。サムスンが珍しくAIソフトウエアのスタートアップを買収した事例で関心を集めた。 ナレッジグラフは人間の頭の中の方式のようにデータを分類・保存・処理する技術だ。例えば「フランス、パリ、エッフェル塔」という単語を保存する時に、パリはフランスの都市であり、エッフェル塔はそこにある塔という単語間の関係まで構造化して保存する。ナレッジグラフはAIが人間の質問の脈絡をさらによく理解するようにし、チャットGPTのような生成AI言語モデルが嘘を作り出すハルシネーション(誤情報)現象を解決する技術として注目される。 ◇「オフラインAI」強化技術、サムスンフォン協力中 サムスン電子によると、ホロックス教授はこの日の基調講演で、「ディープラーニングは認識と学習に、ナレッジグラフは推論と説明に強みがあり、最近2つを結合したハイブリッド方式で技術が発展している」として、これを活用した個人オーダーメード型AIサービス方案を提示した。その上で「OSTのナレッジグラフエンジンRDFoxをサムスンのモバイル機器に適用することを期待する」と話した。 ナレッジグラフはオンデバイスAIアシスタントサービスを実現する技術に挙げられる。通話内容、写真、スケジュール、習慣のような個人情報を入れたナレッジグラフを個人のスマートフォン・PCに生成すれば、これをベースにAIが専従秘書のように個人に合わせた推薦や業務補助をできるからだ。個人情報を外部サーバーに送らず自身の機器でAIを駆動するため、ネットワークが切れてもAIサービスを使うことができ、最近一部中国製ロボット掃除機で起きたような個人情報流出やハッキングの懸念もない。 ◇大勢はHBMに、次世代PIMも準備 ナレッジグラフが個人用AIの実現をソフトウエアの側面で繰り上げるならば、ハードウエアで超えなければならない壁もある。スマートフォンやPCのような個人用機器はAIを駆動するにはメモリー容量と演算能力に限界があり、サービス速度が遅くバッテリーも速く消耗する。 4日のフォーラム初日にはこの問題を取り上げた。この日サムスン電子内外の半導体専門家らは「HBMが現在AIメモリーのトップランナーであるのは確実だが未来も準備しなければならない」として、次にAIメモリーとして有力なPIM研究について議論した。PIMはメモリー内部で演算する知能型メモリー半導体だ。HBMがAIデータセンターの大量データ学習に適合するならば、PIMは速いAI推論(サービス)に効果的だ。 今回のフォーラムはサムスン電子半導体(DS)部門だけでなく、モバイルと家電が含まれるデバイス経験(DX)部門の長期戦略にも反映される見通しだ。サムスン電子はモバイル、テレビ、家電製品ごとにAI技術を適用し、これを連結して個人化されたAI経験を実現するという目標だが、このためはオンデバイスAIとクラウドAIの最適化された結合とセキュリティが必須であるためだ。同社は6月から社員のAI活用能力強化に向け全社員を対象に生成AIパワーユーザー教育を進めている。