「戦争は簡単に始まるけど、簡単には終わらない」戦争体験者・毒蝮三太夫が語る“平和への思い” #戦争の記憶
戦争の実体験を聞いたら、自分ごとにして誰かに伝えてほしい
――今、ロシアがウクライナに侵攻しています。ウクライナに限らず、世界には戦争や内戦で傷ついている国も少なくありません。 毒蝮三太夫: ウクライナ、大変ですよね。俺は戦争が終わった9歳の時「もう戦争は絶対にない」と思っていたけど、戦争はいまだにある。 20年くらい前、黒柳徹子さんからこんな話を聞きました。カンボジアやアフガニスタンで小さい子どもたちに、大きくなったら何になりたいか聞いたら「大きくなっても生きていたい」と返ってきた、と。彼らの周りには大人になっても五体満足で生きている人が少ないってことなんですよね。内戦のせいで、兄弟で殺し合ったり、親子で撃ち合ったりしている。ウクライナでも他の国でも、今もそうやって争っていると考えたら恐ろしいです。 日本も77年間戦争が起こっていないからといって、中国やロシア、北朝鮮との問題もありますし、怖いですよ。はっきり言って戦争は簡単に起こるけど、簡単には終わらない。2000年、3000年という長い歴史の中で何度も戦争が繰り返されているけど、人間は学んでいないね。地球にはウルトラマンもスーパーマンもいないんだから、地球は地球人で守らなければならないのに、いま地球を壊しているのは地球人なんです。 ――毒蝮さんは、戦争について語り続けることや語り継ぐことの意義をどう感じていますか? 毒蝮三太夫: 俺はたまたま元気だから、86歳になった今もこうして話すことができているけど、明日には話せなくなってしまう可能性もある。語り部として話す人も、だんだん少なくなっています。 20年近く大学で戦争体験の話もしていますが、若い人たちはよく話を聞いてくれているんです。今の若い人は良いものと悪いものをきちんと嗅ぎ分けていますね。 やっぱり実体験は説得力が違うでしょ? だから、生きているうちは、これからも自分の体験を自分の口から“正しく”伝えていきたい。歪曲して話したらその通りに伝わってしまうから。よく「勝者の歴史」って言われますけど、敗戦国日本の「敗者の歴史」も尊いのです。 もし、俺が戦争のことを話さなくなったら今度はあなたが伝えてください。実際に俺から聞いたんだから、それは真実で説得力がある。ぜひ今日の話を自分ごととしてとらえて、誰かに伝えてほしいです。 ----- 毒蝮三太夫(どくまむし さんだゆう) 昭和11年、東京生まれ。俳優、タレント。昭和23年、12歳で舞台「鐘の鳴る丘」でデビュー。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役で人気を博す。平成11年から聖徳大学の客員教授を務める。昭和44年からTBSラジオ「ミュージックプレゼント」のパーソナリティを務めており、53年目に突入した。 文:清永優花子 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)