センバツ2023 準決勝 大阪桐蔭、終盤力尽く 2度目の春連覇逃し涙 /大阪
史上初の2度目の春連覇は遠かった――。第95回センバツ大会の準決勝があった31日、大阪桐蔭は6年ぶり22回目の出場となった報徳学園(兵庫)と対戦。序盤先制したものの、終盤で逆転され、5―7で敗れた。生徒や保護者ら1000人超がアルプス席に集い、熱戦をくり広げる選手らに最後まで声援を届けた。【戸田紗友莉、山口一朗】 「打て、打て桐蔭!」の声援が一塁側アルプス席から甲子園にこだましていた。2点を追う九回2死。球を見極めて四球を選んだ3番・徳丸快晴(2年)を一塁に置き、主砲・南川幸輝(3年)は「4番として、何とか後ろにつなぎたい。終わらせない」との気持ちで打席に入った。 本塁打なら同点の場面。報徳学園の3人目・今朝丸裕喜(2年)に追い込まれてからもファウルで粘った5球目。真ん中低めの落ちる球をとらえた。 快音を残した打球は中堅深くへ。「越えてくれ!」。走りながら、南川は祈った。だが、わずかに及ばず、飛球は守備範囲の広い中堅・岩本聖冬生(いぶき)(3年)のグラブに収まった。目指していた「史上初の2度目の春連覇」がかなわず、南川は「チームに申し訳ない」とうなだれた。 だが大阪桐蔭の持ち味を、この日も見せた。三回には長沢元(同)、村本勇海(同)の連続適時打が出るなど、打者一巡の猛攻で5点を先制し、優位に試合を進めた。 これまでの甲子園大会で常に粘り強く戦い、「逆転の報徳」と呼ばれる相手には一歩及ばなかったが、主将の前田悠伍(同)は「勝てた試合だったが夏までに修正していけたらいい。切り替えたい」と、気持ちを新たにしていた。 ◇「濃い1年半に」 ○…アルプス席では、4月から中学3年~高校3年のチアリーダー部員51人が必死の声援を送った。副主将の中野ゆららさん(高校3年)は2021年夏の甲子園に出場した石川雄大さん(現・国学院大内野手)と幼なじみで、石川さんのプレーを甲子園で見て入部した。この日、先制した三回の攻撃には「応援が届いて良かった」。高3の部員17人は今大会終了後、受験準備で引退する。終盤の逆転負けで、その「瞬間」は急に訪れた。「さみしい」と中野さん。「でも、1年半、濃い時間だった」と振り返った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇打撃力上げ、夏に挑む 長沢元(はじめ)選手(3年) 三回表、2点先制して、なお続く2死満塁のチャンス。5球目の直球をやや詰まりながらも右翼方向に運んだ。その間に二、三塁走者が還り2点を追加した。アルプスから見守った父学さん(46)も「いつか(タイムリーを)打ってくれると信じて首を長くして待っていた。最高」と喜んだ。 初戦の敦賀気比戦では、初めての甲子園に地に足が付いていない感覚を味わい、自分のバッティングができなかった。「打ちたい気持ちが強すぎて力が入って前に行ってしまった」 その後、コーチにアドバイスをもらいながら、基本に立ち戻って「逆方向に詰めて打つ」ことを意識して調整した。 この日は4試合目とあって緊張もほぐれてリラックスして打席に立った。五回にも左翼へ運び、この日2安打。「自分のバッティングを取り戻せた」と手応えも感じた。 チームは終盤に逆転され、日本一を逃した。「全然満足できない。打撃力を上げて負けないチームをつくって夏に挑みたい」。春の悔しさを胸に夏に向かって歩み始めた。【戸田紗友莉】