大坂なおみの何がどう凄い?18歳のテニスプレーヤーの将来性は?
現に今回の東レPPOでも大坂は、過去の辛い経験から得た教訓を、躍進のジャンピングボードへと変えてみせる。それは2回戦の、対ドミニカ・チブルコバ戦でのこと。第1セットを6-2と簡単に奪い、第2セットもゲームカウント5-1と勝利まで4ポイントと迫った場面で、彼女は「全米オープンの悪夢に襲われた」のだと言った。彼女の言う「悪夢」とは、3週間前の全米オープン3回戦で、世界9位のマディソン・キーズを第3セット5-1まで追い詰めながら、「勝利を意識した」がために大逆転負けを喫したこと。その時の記憶に身体を縛られた大坂は、自らのミスで3連続でポイントを失った。 しかし全米オープン後、「プレーは悪くなかった。気持ちを強くしよう」と誓っていた大坂は、3週間前と同じ轍を踏むことはなかった。 「過去のことは忘れて、目の前のポイントに集中しよう。例え何が起ころうとも、出来ることは何でもやろう」 そう自分に言い聞かせ、今度は高速サーブを軸に5ポイント連取。ニューヨークから持ち帰った課題に対する解答を、彼女は東京で自ら探し当てた。 急こう配の成長曲線を描き、「目標」へとまい進する18歳。それだけに、彼女の前に立ちはだかる障壁となりえるのが、ケガだろう。今季の彼女は腹筋や肩などを痛め、特に6月に負った膝の負傷は、ウィンブルドン欠場へと大坂を追いやった。180cmの恵まれた体躯を持つとはいえ、彼女はまだ18歳。 急激に上がった対戦相手のレベルや、必然的に急増する試合数に、成長過程の肉体がついていかない側面があったのだろう。また大坂本人は「赤土や芝など、試合経験の少ない種類のコートで戦ってきた」ことがケガの背景にあると分析した。フィジカル強化や効率のよい身体の動かし方の習得、そして無理のないスケジュールの組み方などが、次の課題になっていくのかもしれない。 大坂が壮大な目標を宣言するのは、幼少の頃から、口にした目標はことごとく達成できたからだと言う。 トップ100に入った時も、そうだった。トップ50入りも、宣言した通りになった。 ならば……世界1位も、そしてグランドスラム優勝も、いつの日か現実になるのではないか――? そう思わせてくれるだけのスケール感と芯の強さを、この18歳は間違いなく持っている。 (文責・内田暁/スポーツライター)