「走るのは大嫌いだ」「ドーナツを年に20個は食べる」…一流投資家トム・ゲイナーの“徹底してほどほど”な成功戦略【金融ジャーナリストが解説】
「徹底してほどほど」かつ「頑固に続ける」戦略の明白な効果
ゲイナーはまた、よくない方向に行きすぎないように用心している。オフィス近くの湖を急ぎ足で一周したあとは、「一日30分の運動目標」の達成をすかさずアップルウォッチでチェックする。さらに、旅行中以外は毎日体重を量る。 「増えたと思ったら、運動を少しきつくするか、しばらくは食事にもっと気をつける。大きく外れないように注意していれば、元に戻すのはむずかしくない。私の生き方もおおむねこんな感じだ」 この「徹底してほどほど」かつ「頑固に続ける」戦略の効果は明白だ*1。2017年に一日半かけて彼の話を聞いたとき、ゲイナーの体重は194ポンド(88キロ)で、27年前とほとんど同じだった。体重の増加でいえば、私のほうが圧倒的に上回っていて、日々の行動のわずかなちがいが数十年経つとこれほどの大差になることがよくわかる※2。 これらのことから、投資と人生の両方に当てはまる重要な結論が導かれる。圧倒的な勝利は、少しずつの進歩と改善を長く積み重ねた先にある。「大きな成功を収めるための秘訣は、きのうよりもきょうを少しでもよくするように努力すること」とゲイナーは言う。 「やり方は人によってちがうだろうし、それでいい。だいじなのは前へと進む努力を繰りかえすことだ」 ※1:遺伝や代謝の相互作用は人それぞれに異なるため、ゲイナーの食事や運動の仕方がすべての人に等しく効果をもたらすとは言えない。だが、彼のアプローチのほうがバフェットの食習慣よりも多くの人に役立つことだけは断言できる。バフェットは朝の通勤途中にマクドナルドに立ちより、特大の赤身肉を滝のようなコカ・コーラで流しこむ。バフェットはかつて投資家モニッシュ・パブライの娘たちに向かってジョークを飛ばした──5歳になるまでに口にしたことがないものは食べないようにしているものでね。 ※2:2020年に再会したとき、「けさ体重計に乗ったら189.6ポンド(86キロ)だった」とゲイナーが言った! 地道に長く続けた努力が実を結び、ついに30年前と同じ体重に戻ったのだ。 金融ジャーナリスト ウィリアム・グリーン
ウィリアム・グリーン