【資産総額8,000万円】介護離職した独身二男、病に倒れ入院したスキに…「すべての不動産は長男へ」80代父に遺言書作成を迫った、長男夫婦の非道
3人きょうだいの真ん中で二男の男性は、体の弱い両親の面倒を見るべく実家に残ります。しかし、介護と仕事が両立できず、離職へ。その後、自身も病気を患い入院します。そのすきに長男夫婦が父親に遺言書作成を迫り…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
体の弱い両親のため…介護離職に至った50代男性
今回の相談者は、50代アルバイトの佐藤さんです。将来の父親の相続の件で兄とトラブルになっており、対応の方法を相談したいと、筆者の事務所を訪れました。 佐藤さんの父親は80代で健在ですが、母親は2年前に亡くなっています。佐藤さんのきょうだいは、50代の長男、同じく50代で二男の佐藤さん、40代の妹の2人です。 佐藤さんは独身で、父親と実家で同居しています。兄と妹は結婚し、都内に暮らしています。 「私の両親は体が弱く、病気がちでした。兄は大学卒業後、すぐに結婚して家を出てしまったので、両親のサポートのために私が実家に残りました。新卒で地元の企業に就職し、そこで長く働いていました」 最初は大きな問題はありませんでした。しかし、両親が60代後半になってから、生活全般のサポートが必要になりました。佐藤さんは働きながら両親の世話をこなしていましたが、次第に両立が困難になり、3年前に介護離職してしまいました。 「2年前に母を見送ったあと、アルバイトをしながら父の介護を行っていましたが、今度は私のほうに病気が見つかり、療養と手術のため2カ月ほど入院することになったのです」 ひとりになる父親を心配していたところ、その間、兄夫婦が一時的に実家に戻って父親を看てくれるというので、佐藤さんは安心していました。
二男の不在中、父は「不動産は長男へ」との遺言書を…
退院した佐藤さんは、兄夫婦と入れ違いで実家に戻りました。 「実家に戻ったあと、自宅で自分の入院関係の書類を整理していたとき、戸棚の引き出しの奥から、見慣れない法律事務所の名刺や公証役場の封筒が出てきたのです」 佐藤さんは父親にこれらを見せ、どうしたのか尋ねました。 「最初は口ごもっていましたが、兄から促されて遺言書を作成したと教えてくれました」 長男夫婦は父親へ「弟に万一のことがあるかもしれない。そのときに財産を守るため〈不動産はすべて長男に〉という遺言書を書いておけば安心だ」といって、公正証書遺言を準備させたのでした。 「どうしてそんなことしたの? と聞いたら〈兄ちゃんから強く言われて、断れないかった、すまない〉と…」