【資産総額8,000万円】介護離職した独身二男、病に倒れ入院したスキに…「すべての不動産は長男へ」80代父に遺言書作成を迫った、長男夫婦の非道
念のため、証拠として動画撮影も実施
公正証書遺言は、公証人が本人の意思確認をして作成するため「本人の意思なのか否か」といった問題は発生しません。また、認知症等で意思確認ができない場合は作成できないため、無効になることもありません。 しかし、長男の意思通りではない内容となる場合、不服に持った長男が「遺言無効確認訴訟」を起こす可能性もあります。父親から長男に直接伝えてもらえればいいのですが、機会が作れないことも想定し、父親の意思で遺言書を作ったという証拠を残すことにしました。 佐藤さんの父親には認知症の兆候もなく、会話も問題ありません。佐藤さんは、父親に「自宅は二男に相続させる、現金はきょうだいで平等に分ける」と話してもらい、それをスマホで動画撮影しました。 これにより、万一の際にも説得する材料となります。 また、遺言書の「付言事項」として、下記の文言を追加しました。 前回の遺言では、二男の〇〇に体調不良などの事情があり、上記不動産を長男〇〇に相続させることとしました。しかし、二男〇〇は、その後も私の面倒をみてくれており、いつもありがたいと思っています。引続き面倒をみてもらおうと思い、前回の遺言書の一部を書き換えることにして、今回の遺言書を作成しました。長男〇〇も理解してください。
佐藤さんを心配していた妹も笑顔に
すべての手続き完了したあと、佐藤さんは妹さんを伴って、筆者の事務所に立ち寄ってくれました。 「遺言書を作成し直して、本当に安心しました。父親も気が楽になったようです」 妹さんも、笑顔を見せてくれました。 「私は夫の両親の介護があり、自分の両親のことは次兄に任せきりでした。次兄は介護のために退職したうえ、病気で手術もしていますから、次兄が自宅と駐車場を相続できれば安心です。父も申し訳なかったと謝っていました」 お2人はかわるがわる頭を下げ、事務所を後にされました。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子