【師走ひと模様】「南郷刺し子」伝統守る 福島県南会津町の馬場純子さん
家事を終えた後、木綿の布を手に取る。針と白い糸で少しずつ刺しゅうを施す。福島県南会津町南郷地域の南郷刺し子会長の馬場純子さん(71)は、布を補強しながら長く使う「刺し子」文化を守り続ける。 農閑期の冬、はんてんを仕立て、古くなったら仕事着に、そして雑巾として布を無駄にしない。「昔の人は物を大切に使っていた。その思いを今に伝えたい」 かつて地域では、妻が夫の晴れ着としてはんてんを仕立てた。川から水を引く作業などの安全を願った。だが、伝統は明治時代に途絶えた。 2009(平成21)年、茨城県出身の原良江さんが文化祭で自作のはんてんを展示した。馬場さんは作品に感動し、有志と刺し子に挑戦。2010年、原さんを会長に刺し子会を結成し、その後、馬場さんが継いだ。 ◇ ◇ 地域の1歳の子に毎冬、ベストを贈る。会員が手分けして健やかな成長を願う麻の葉模様を施し、定例会で手渡す。次回は8日、南郷総合センターで開催する。
「受け取った子が大きくなり、伝統を受け継いでほしい」。生活の知恵を伝え続け、思いの輪を広げる。