円相場の歴史的な安値、日銀発表「実質実効為替レート」でも明瞭に…円安の理由と今後の展望【経済評論家が解説】
歴史的な円安が進行しています。かつての1ドル360円時代を思えば、現在の為替レートなんて…と考える方もいるかもしれませんが、その後、現在まで米国のほうが物価が上がり続けていることを考えると、単純な比較はできません。なぜこれほどまでに円安が進行したのか、そして今後の展開はどうなるのか、経済評論家の塚崎公義氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
為替レートの基本は「日米物価水準」の一致
為替レートとは、各国通貨の交換比率のことですが、本稿ではドルの値段のことを為替レートと記します。その基本は、日米の物価水準が概ね一致することです。 もし1ドルが1円だったら、日本人が円をドルに替えて米国に買い物に行くでしょう。そうなれば、銀行にはドル買い注文が殺到してドルが値上がりするはずです。値上がりが止まるのは、米国に買いに行く人がいなくなったとき、すなわち米国の物価が日本と同じになった時です。 1ドルが1万円だったら、今度は米国人が日本に買い物に来るので、ドルの値段は下がって行くはずです。 もちろん、日米の物価が完全に一致するわけではありません。米国まで買い物に行くコスト(実際には通信販売の輸送費等)がかかりますから。加えて、牛肉と自動車では日米での値段が一致する為替レートが異なりますから。 したがって、ある程度の幅を持って考える必要があるわけです。その幅のなかで、ドル高になったり、ドル安になったりと、為替レートが変動しているわけですね。
物価上昇率格差を考えると、現在は歴史的な円安
かつて1ドルは360円でしたから、現在の150円は歴史的な円安ではありませんが、その間に米国の物価が日本よりはるかに大幅に上昇しているので、「日米の物価が等しくなるような為替レート」は大幅に円高になっているのです。それを考えると、現在の為替レートは、歴史的な円安だといってよいでしょう。 実際、米国に旅行した人は「米国は物価が高い」といいますし、日本に来ている外国人は「日本は物価が安い」といっていますから。 なお、日銀が発表している実質実効為替レートは、現在の円相場が歴史的な安値であることを示しています。ちなみに、実質実効為替レートというのは、筆者が「輸出困難度指数」と呼んでいるものです。文末の初心者向けの解説をご参照下さい。