成長しない主人公? アラフォー寅子(伊藤沙莉)の変化について『虎に翼』制作統括に訊いた
連続テレビ小説『虎に翼」(NHK総合ほか)第22週「女房に惚れてお家繁盛?」が放送され、寅子(伊藤沙莉)と優未(毎田暖乃)が航一(岡田将生)の実家である星家との同居が始まった。 【写真】杉田(高橋克実)と睨み合う寅子 寅子が女学生時代の17歳のときから物語が始まった本作で、現在寅子は42歳。寅子の変化について、制作統括の尾崎裕和さんに訊いた(取材・文/佐野華英)。 ■ 寅子は「達観しない」「丸くならない」 脚本家の吉田恵里香さんとともに、中年以降の寅子の人物造形についてどのようなことを心がけたのか聞くと、尾崎さんはこう語る。 「寅子は年齢を重ねても、達観しない。『寅子が寅子であるところ』は持ったままにしたいという話を、吉田さんとしました。年齢的に大人になっても、寅子らしい年の重ね方をさせたかったと言いますか。もちろん、いろんなことに対する視野は広がっているのだけれど、だからといって丸くなっていくとか、物分かりが良くなったりということにはさせたくない。そんなことを、中年以降の寅子のキャラクター作りにおいては意識しました」。 ドラマでは、寅子が裁判官になった後も「完璧な人間ではない」「不完全で矛盾を抱えたひとりの人間である」ということが、繰りかえし描かれている。 この意図について聞くと、尾崎さんは「『新潟編』では寅子が判事になって、例えば刑事事件では『被告人は罪を犯したのか、犯していないのか』を『判断する』立場になりました。そんななかで、いくら裁判官であっても完璧に人を裁くということはできないのだ、というところをしっかり描きたいと思いました」とコメント。 そして「ドラマにも登場しましたが、裁判官が3人いて、その三者が話し合って合議するというシステムがある。一人の判断では決めきれない部分があるということなんだと思います。裁判官の中にも『揺れ』がある。寅子も揺れながら、迷いながら、どうやって答えを出したらいいのかを探っていったということなのかな、と思います」。