【特集・里山WEEK】人と里山をつなぐのは「馬」 里山再生の取り組み
テレビ信州
今週は里山について考え、理解を深めるテレビ信州「里山WEEK」。初日の25日は、松本市での里山再生の取り組み、その主役は「馬」です。 右に傾けると左に行って。左に傾けると右行くんで」 「上手上手!いいところ行ってますよ」 11月16日。松本市の田んぼで行われていた「馬耕」体験。馬が犂を引いて田畑を耕す伝統農法です。この体験会を企画したのは、市内の柳沢林業です。 柳沢林業 原薫社長 「動物には親しめる場所はあるけれど、柵の向こうですよね。体温を感じるとか馬のにおいをかぐとかそういうのが大切な感性を育むだろうなと思い」 「ヤマト」19才。人間で言えばおよそ60歳。鉄のソリを引いて力とスピードを競う北海道の「ばんえい競馬」で活躍。 現役を引退し、8年前、柳沢林業にやって来ました。 柳沢林業 原薫社長 「最初は「馬耕」ではなくて「馬搬」といって、材木を扱う林業会社ですので木を伐りだして、一つの手段として「馬搬」ができたらいいなというところで馬の導入を検討しました」 馬を使って山から木を運び出す「馬搬」、昔ながらの林業の方法です。重機を使う場合には、山の中に作業道を作る必要がありますが、「馬搬」ではその必要がなく、低コストで環境にも優しい林業が実現できるといいます。 柳沢林業 原薫社長 「松枯れが広がり始めたこの松本でも、20年ぐらい前からぽつぽつと目立つようになって、この木材を生かす手立てはないのかって考えた時に、市民に知ってほしい、変わったことをしなければいけない。で、木材も生かすためにも手段が必要といった時に「馬」というところに結びついて」 実際に「馬搬」を行う機会は少ないものの、会社が所有する田んぼでの馬耕で活躍したり、地元の神社の祭りやイベントにも参加したりするなど、親しまれる存在です。 「おはようございます。きょうはお越しいただき、ありがとうございます」 この日の体験会にも地域の住民や県外からの家族連れなどが集まりました。ヤマトのほかにも伊那市と北安曇郡白馬村で暮らす馬も参加。 子どもでも、ご覧のとおり!馬耕だと機械で踏み固められることなく、空気を含ませたいい土に変わるといいます。また、馬が行うことで燃料費がかからないというメリットも。 参加者 「お馬さんには乗せてもらったことはあるんですけど、こんなに力強いものだと思っていなくて、ちょっと感動しています」 「機械とかも使わずに人とかを集めながら、ゆっくりやっていくという生活もいいなと思いました」 参加者は昔ながらの馬との暮らしを体験しました。 柳沢林業 原薫社長 「木材生産がメインだから、それしかやらないでは、これからの時代はいけないだろうな。しかも林業が遠い世界になってしまった以上、どれだけその山から里に街に近づいていくかって必要だと思うので、そう意味では里山での取り組みというのはいろいろ必要になってくるなと思うんですけれど、その一つとして自分たちが農業をやることで荒廃農地が耕されたり、水の大切さを実感できる」 ヤマトは普段、岡田地区の牧場で暮らしています。ここは、ヤマトが来るまで放置された土地でした。地区の有志たちが荒れた里山を再生させようと、整備した場所です。 高山昌水ディレクター 「こうやって素晴らしい環境で伸び伸びと過ごすのもヤマトにとっていいですよね」 柳沢林業 原薫社長 「馬を飼われている方たちは皆さん本当にそうおっしゃいます。私たちは他を知らないというか。この環境があったからヤマトを迎え入れることができたし、離していても大丈夫ということで」 柳沢林業 原薫社長 「おバカなんです。そういうところは。狭いところ、狭いところに草いっぱいあるのに」 そんな、愛くるしい性格もヤマトの魅力。 柳沢林業 原薫社長 「ヤマトがいなかったら、いわゆる裏山的な里山というところにこんなに関わることにならなかったと思うんですよね。やっぱり馬がいるということがわかると牧場の中まで入ってきてくださって、多くの人たちがこの場に足を運んでくれるようになった」 「ヤマト」がいるから里山に人が集まり、里山に人の手が入る。「ヤマト」はこれからも人と里山をつないでいきます。