ポスティング問題の裏にあったもうひとつの事情
合意と伝えられてからも最終決定が遅れていた新ポスティング制度が、早ければ18日(現地時間17日)に正式合意される見通しとなった。遅々として進まなかったのは、上限を定めされることを渋った日本側だけの理由だけでなく、大リーグ選手会の迷走も一因だと考えられている。 ■大リーグ選手会の思惑とは 大リーグ選手会は12月に入り、マイケル・ウェイナー専務理事の死去に伴い、かつてヤンキースなどでプレイしたトニー・クラーク氏が新専務理事となった。 その選手会のトップに立ったクラーク氏は12月3日の就任会見で、「上限という言葉には言外の意味が含まれている。我々は、上限という世界とは無縁で、これからもそのつもりだ」と話し、入札額に上限を設けることに異を唱え待ったをかけていたのだ。彼は、さらにこう言っている。 「”こちらに来る選手”のことも考えなければいけないが、”こちらにいる選手”のことも考えなければいけないから」 ■田中獲得のしわ寄せが他の選手へも影響 新案では入札金の上限が2000万ドルと比較的低く設定されていることから、多くの球団の入札が予想され、争奪戦のポイントは年俸になり、必然的に田中将大の年棒の高騰が考えられる。ヤフー・スポーツのジェフ・パサン記者によれば、「6年で1億ドル(約100億円)を越える契約になる」と話すリーグ関係者もいるそうだ。 選手の年棒アップは、選手会が常に要求してきたことだ。それなのに彼らが新ポスティング制度で来る選手の年俸アップに反対したのは、矛盾するようだが、“こちらにいる選手”への影響を心配したものだ。 噛み砕くと、こういうことになる。 田中の年棒が高騰すれば、彼を獲得するチームは、どこかで他の支出を抑える可能性がある。となると、すでに大リーグ選手会に所属している誰かが、その影響を被るかもしれない。また田中が来ることで、先発の枠が間違いなく一つ消える。ということは、やはり選手会に所属する誰かが、先発の座を失う可能性があるーー。