知られざる「ルヴァンカップ」の真実(3)カズら日本代表のアジアカップ初優勝が人気を後押し、「お前はバカだ」ブラジル2大レジェンドが激突
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、名古屋グランパスとアルビレックス新潟の手に汗握る決勝が話題となったルヴァンカップの「意外と知らない」本当の話。 ■【画像】「可愛すぎんか」田中みな実も激ハマり…元日本代表・大迫勇也の美人妻、ブーム再熱「耳ツボジュエリーだらけ」の衝撃近影に大反響
■満員のサポーターを熱狂させた「日本代表」
「日本初のプロサッカー」の大会、ナビスコカップは、9月の開幕当初は5割ほどの入りだった。しかし、その日にいきなり各クラブに「サポーター」が誕生してにぎやかな雰囲気になり、節を追うごとに観客数も増えて熱気を増した。 意識が一変した選手たちの死に物狂いのプレーが共感を呼ぶとともに、カズ(三浦知良)、ラモス瑠偉、加藤久、都並敏史、北澤豪、武田修宏ら日本代表のスターをズラリと並べたヴェルディは、まるで人気アイドルのような状況になった。ナビスコカップの深まりとともに、Jリーグは大きな熱狂に包まれた。 それを大きく後押ししたのが、大会を中断して広島で10月29日から11月8日まで行われた「AFCアジアカップ」での日本の躍進と初優勝だった。 ハンス・オフト監督率いる日本代表は、カズの劇的なゴールでイランを破ってグループリーグを突破、準決勝ではGK松永成立が退場になるというアクシデントがありながら、中山雅史の決勝点で劇的な勝利。決勝戦では3連覇を狙うサウジアラビアを高木琢也のゴールで下し、広島ビッグアーチを埋めた満員のサポーターを熱狂させた。その熱狂が、そのまま半月後の東京・国立競技場に乗り移った。
■ブラジル代表「レジェンド」が国立で火花
第1回決勝戦の主審は十河(そがわ)正博、当時43歳。栃木県出身の高校教師で、1983年からJSL1部を担当、1986年からは国際審判員としても活躍してきたベテランだった。副審の塩谷園文一(44歳、東京都出身)と山田等(43歳、秋田県出身)は、ともに元日本サッカーリーグ(JSL)の選手で、塩谷園はGKとして古河電工で活躍、そして山田はFWあるいはサイドバックとして、スピードを生かして日本鋼管(NKK)でJSL170試合に出場した。 3人のベテラン審判員は、ズラリと並んだヴェルディのスターたちにも、そして、この年に「寄せ集め」で結成されたばかりながらMF三浦泰年(前所属は読売クラブ)、MF澤登正朗(この年、東海大を卒業し、JSLを経ずに清水でプロとなる)、堀池巧(読売クラブ)、長谷川健太(日産)ら日本代表選手を並べたエスパルスにも位負けすることなく、堂々たるレフェリングを見せた。 ヴェルディの監督はブラジル人のペペ(本名はジョゼ・マシア)。やや太っちょでハゲ頭の小柄な人だったが、ブラジルでは「レジェンド」の一人に数えられる大スターだった。1950年代から1960年代にかけてサントスFCで左ウイングとして活躍し、ペレとともにサントスとブラジル代表の攻撃を牽引した。左足のアウトサイドで蹴る強烈なFKの名手としても知られていた。この年57歳。穏やかで公平な性格で、選手たちにも慕われたが、残念ながらこの年を最後にブラジルに戻った。 一方のエスパルス監督はエメルソン・レオン、47歳。ブラジル代表歴代GKの5指に入る人で、4回ものワールドカップに出場した。こちらもブラジルの「レジェンド」のひとりであり、後にはブラジル代表監督も務めた。歯に衣(きぬ)着せぬ言動で日本でも話題を提供し続けたが、このナビスコカップ決勝を前に「なぜ会場が国立競技場なんだ」とJリーグにかみついた。「国立はヴェルディのホームであり、不公平だ」というのだ。
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