「サントリー生ビール」の好調 若者の心つかんだ、CM登場の“グッズ”
サントリーが展開する「サントリー生ビール」ブランドが好調だ。同社が発表した11月の販売数量は、対前年比193%。1~11月の累計は同156%で、年間を通して伸長を続けている。 発売当時の「サントリー生ビール」(提供:サントリー) 快進撃をけん引しているのが、3月から販売を開始した業務用の瓶・樽製品だ。担当者によれば、消費者との接点が増えたことを背景に、家庭向け缶製品の売り上げも拡大しつつあるという。どのようにリピーターの獲得につなげているのか。
発売から1年半、定番化進む
サントリー生ビールの発売は2023年4月のこと。主力としていた「プレミアム・モルツ」よりも手に取りやすい価格の商品として、「アサヒスーパードライ」「一番搾り」などがひしめく、スタンダードな価格帯に進出した。 発売後は順調に売り上げを伸ばし、販売数量は発売から3カ月で200万ケース(1ケースを633ミリリットル×20本として換算)を突破。当初300万ケースとしていた年間販売計画も、早々に上方修正し400万ケースとした。 2024年3月からは、飲食店向けに瓶・樽製品の取り扱いを開始。取り扱い店舗数は順調に伸びており、11月末の時点で上方修正後の年間計画2万店を突破している。「日常的な食事に合わせやすい、中身や味わいを評価いただいています」と担当者は話す。 好調の背景には何があるのか。担当者は「飲食店」「コミュニケーション施策(テレビCMなど)」「店頭販売」を合わせた「三位一体戦略」が奏功したと見る。「飲食店での取り扱いが増えたことで、お店で初めて飲んだ方に『缶でも購入したい』と評価していただいていており、これが缶の売り上げ増にもつながっていると考えています」(担当者)。
「オリジナルジョッキ」も好評
テレビCMでは若手俳優の山崎賢人さん、上白石萌音さんを起用し、若年層(20~40代)に向けて訴求を強化する。インテージSCIの調査によれば、ビール市場全体(発泡酒なども含む)における商品の新規購入者のうち、若年層は39%。一方で、サントリー生ビールの若年層比率は44%とこれを上回っているとのことで、ターゲティング施策でも手応えを得ているようだ。 飲食店向けに提供している「オリジナルマグジョッキ」も好評だという。膨らみのあるどっしりとしたシルエットと、青地のブランド名が特徴的な専用ジョッキだが、CMに登場させたところ「出てくるジョッキがかわいい」「まるっとした形が面白い」「どこで手に入るのか」といった反響が見られたという。 こうした声を受けて、同社はこのジョッキを、缶製品のキャンペーンでも積極的に取り入れている。2024年7月には、景品に当該ジョッキが付いてくる350ミリリットル缶のケース(24本入り)を数量限定で用意。9月には、購入点数に応じて名入れのジョッキなどをプレゼントするキャンペーンを開催した。「CMに出てくるジョッキで飲める」という“体験価値”によるアプローチも、売り上げの伸びに貢献しているようだ。 飲用体験を充実させるべく「形状にもこだわっている」と担当者は強調する。「直径を大きくすることで、一口当たりの量が多くなるようにしました。飲み口の厚みは薄めに抑え、口当たりが良くなるようにバランスを工夫しています」 将来的に、「年間1000万ケース級」のブランドを目指すというサントリー生ビール。“体験”を重視し、若年層への訴求を強化するアプローチ施策は、ブランドの長期的な定着につながるか。
ITmedia ビジネスオンライン