政府の『骨太の方針2024』に「目玉政策がない」「“小骨”では?」の声も…盛り込まれた政策は? 専門家が解説
◆デフレからの脱却目指し賃上げを支援
ユージ:政府が6月21日(金)に閣議決定した「骨太の方針」には、どういった政策が盛り込まれましたか? 塚越:さまざまな内容があるので代表的なところを紹介します。まず日本経済は「デフレから完全に脱却する千載一遇のチャンスを迎えている」とした上で、賃上げが33年ぶりの高い水準となっているので、これを定着させて新たな成長型のステージに移行させていくとしています。 実際に賃上げを持続的におこなう具体的な例としては、業務を効率化して生産性を高めようとする企業へ支援を進めることです。また、男女間の賃金格差の解消に向けた環境整備や価格転化対策などに取り組むということもいっています。さらに労働市場改革も推進して、成長分野への人材移動を促すため、仕事の質や成果を重視する「ジョブ型」の人事方針をこの夏に公表して、企業に導入を促すとともに、リスキリング=学び直しへのさらなる支援をおこなうということです。大学と産業界が連携して、最先端の知識などを身に付けるプログラムを創設し、来年度中におよそ3,000人の参加を目指すことも盛り込んでいます。 他には、一般ドライバーによる「ライドシェア」は、安全を前提に「全国で広く利用可能にする」としていますが、全面解禁の時期は未定で要するに「先送り」になっています。他にもいろいろとありますが、なんというか目新しさはありませんよね。これまで言われてきたことを盛り込んでいる感じですね。
◆半導体企業への投資も
ユージ:政策のなかで、塚越さんが気になったのはどういったものですか? 塚越:私が気になるのは「半導体」への投資です。今回の方針には支援のために「必要な法制上の措置を検討する」、つまり法律をつくって援助したいと書いています。半導体は日本が80年代までトップを走っていた領域ですが、今は正直に言えば「風前の灯」状態でなかなか厳しいです。 政府の支援で設立した半導体企業の「Rapidus(ラピダス)」を中心に支援するため、今後どこまでお金をつぎ込むのか。アメリカをはじめ、各国も対GDP費では日本と同じくらい予算をかけているので、悪いことではないかなと思います。 ただ、ラピダスが半導体を量産するには5兆円必要といわれており、経産省は現段階で最大9,200億円の支援を決定していますが、(民間金融機関の融資実績がないラピダスは資金調達が課題となっており)財源確保をどうするのかが課題です。 法律を作っていろいろとやるにしても、勝算はどれだけあるのか、お金をかけてもいいけれども、同時に検証するのも大事です。それなりに大きい決定になるのかなと思います。
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