「無理を言わない志村さんが唯一頼んできたことは…」 志村けんが毎年訪れた福井の温泉宿、女将が明かす飾らない素顔
「再建したら必ず一番最初に行くからね」
決して無理を言わない志村が、唯一、女将に頼んでくることがあった。 「お帰りになる時に、必ず私に『女将、来年は雪を降らせておいてね』とおっしゃるんです。私が『はい、かしこまりました』と申しますと、安心したようにほほ笑まれました」(同) 希代のコメディアンが定宿にした「べにや」は明治17(1884)年創業。3000平米の日本庭園を囲む2階建ての建築物は国の登録有形文化財に指定されていたが、平成30(2018)年に火災が起きて全焼。志村は「再建したら必ず一番最初に行くからね」と、わざわざ電話をかけてきた。 しかし、再建には3年かかり、令和2(2020)年にコロナで亡くなった志村の再訪はかなわなかった。 山崎まゆみ(やまざきまゆみ) 温泉エッセイスト。1970年新潟県生まれ。跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)。内閣府「クールジャパン・アカデミアフォーラム」や国交省、観光庁の観光政策会議に有識者として参画。9月6日『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)発売。 「週刊新潮」2024年8月15・22日号 掲載
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