湘南ベルマーレJ2降格の背景にある移籍モラルの崩壊
ゴールと勝ち星を奪えない状態が続き、やがて自信までも失う悪循環に陥るのでは、という危機感はシーズン開幕前からあった。昨シーズンの躍進を支えたMF永木亮太(鹿島)、DF遠藤航(浦和レッズ)、GK秋元陽太(FC東京)、DF古林将太(名古屋グランパス)が一気に完全移籍で抜けたからだ。 2013シーズンからキャプテンを務めていた永木は3年連続で、リオ五輪でキャプテンを務めた遠藤には2年連続でオフにオファーが届いていた。それでも愛着深い湘南で目に見える結果を残したいという思いで契約延長を決断し、実際に昨シーズンにはJ1残留を勝ち取った。 移籍が秒読み段階に入っていた昨年末も、2人を引き留めるために最後の交渉を行う時間がわずかながら残されていた。しかし、オフ恒例のブンデスリーガ視察中だった曹監督は、状況を報告してきたフロントに対して「頑張ってほしい、と言ってあげてください」と伝えている。 選手たちから厚い信頼を寄せられる指揮官が直接出馬して説得すれば、永木も遠藤も翻意していたかもしれない。しかし、2人のサッカー人生を考えたとき、さらに成長するためには新たなステージへ挑むべきだと考えた曹監督は、メッセージを介して背中を押した。 本来ならば契約を残す選手を完全移籍で手放せば相応の違約金が発生し、送り出した側はそれを元手に新戦力を補強するポジティブなサイクルが生まれる。しかし、いま現在のJリーグでは、クラブ側と選手の契約にも関わる代理人及びマネジメント会社の間で「移籍に関するモラルが崩れている」と、湘南の眞壁潔代表取締役会長は指摘したことがある。 「誰が決めたのかはわからないけど、違約金の設定が年俸の1年分という訳のわからない暗黙のルールがある。大きな資本のクラブに寄り添う世界ができあがっている。代理人だってそっち(ビッグクラブ)に寄っていたほうが、商売になるわけだからね」