■高活性のニジマスたちに大興奮!

L字型の低い堰堤があるプールの上流側。左岸よりの流れ込みの反転流から大物が出ました

　さらに上流へ。集約した高低差のある流れに岩が点々と転がり、流れに変化をつけています。ここでは小さめのニジマスたちが果敢にフライに喰らいついてきました。 　やがてL字型の低い堰堤があるプールが登場します。そしてその上流、対岸の切り立った斜面、流心から外れた反転流で水面付近を気にしながらのんびりと泳いでいる大きな影を見つけました。 　魚の顔先を目指し、慎重にフライをドリフトさせます。フライが流心から反転流の方へ吐き出された瞬間、黒い影が浮上してきて吸い込むように咥えました。 　大きなニジマスは首を振りながら、いったん上流の流れ込みに移動していきます。複雑な流れの中を岩盤の下に潜り込もうとする動き。そうはさせまいと耐えていると、急に方向転換しました。これで取れるかと思いきや、今度は猛烈なダッシュで下流へ向かいました。一段下に入られるとキャッチの可能性が下がるので、ひたすらプレッシャーを与え続けます。最終的にはどうにか流れの緩い場所へ誘導でき、ようやく無事に取り込めました。 　ボリュームあるニジマスは、そのサイズもさることながら見事な体躯です。太い魚体に発達したヒレ、頬から体側にかけてのくっきりとしたレッドバンド。たくましさを感じずにはいられません。興奮さめやらぬまま、これ以上の釣りは蛇足とばかりにひと休み。 　紅葉にはまだ早いですが、優しく差す光や渓の匂いに季節の移ろいを感じます。河原の岩に腰掛け、せせらぎと虫の音のハーモニーに耳を傾けるひととき。コカゲロウたちに混ざって大きめのカゲロウも川面に舞っていました。ときおり流れに沿ってライズ（水面付近に表れる魚の捕食行動）も起こっています。 　早めにロッドを仕舞い、田中屋さんへと戻りました。腕章（特別区の遊漁券）を返却がてら、その裏にあるそば処「黒門」さんへ。手打ちのお蕎麦に舌鼓を打ちながら、閉店間際までおしゃべりに花が咲きました。心もお腹も満たされた秋の一日、再訪を心に帰路に就きました。 杉村 航（すぎむら わたる） 山岳フォトグラファー。 1974年生まれ。兵庫県育ちの長野県在住。 沢に薮山、山スキー、道なき道をいく山旅が好き。 ライフワークはトラウトフィッシング。美しいヤマメや イワナを求めて、全国の渓流に足しげく通う日々。 小谷村山案内人組合所属、北アルプス北部遭対協。 全日本釣り団体協議会公認・フィッシングインストラクター