「ソニーKADOKAWA連合」がアニメ業界にもたらす激震 買収実現すれば勢力図は一変か
怒涛のM&Aも見逃せない。2023年11月にタイのアニメスタジオと資本業務提携すると、今年6月には「ダンダダン」などを手がける国内の有力アニメスタジオ・サイエンスSARUを買収。10月には「君の名は。」などの新海誠監督作品を扱うコミックス・ウェーブ・フィルム株も6.0%取得した。 ■さらなる打ち手を迫られる東宝 これら制作関連のM&A以上に注視すべきは、10月に発表されたアメリカのGKIDS買収だ。同社は北米を中心に、スタジオジブリ作品などのアニメ配給を担ってきた。
東宝の松岡宏泰社長は10月16日の決算説明会で、「日本のアニメ関係者が海外で作品を展開する際に、GKIDS、あるいは東宝を信頼し、架け橋のような存在になれることを目標にしたい」と語った。これはソニー傘下のクランチロールが担ってきた役割を、東宝も映画配給で果たしていくという宣言にほかならない。 そんな東宝も悩みの種はIPの創出だ。これを打ち破るべく、8月にはオリジナルIPの企画開発と国内外における活用を目的に、バンダイナムコホールディングスと資本業務提携を締結。ゲームからアニメ、玩具までIP展開の総合力に長ける同社と手を組み、ソニーに先手を打ったばかりだった。
以前、ある映画大手の幹部は東宝の戦略について、「売り物は出ていないが、ゆくゆくは(ソニーが有する)動画配信機能もM&Aしたいのではないか」と読み解いていた。ソニーがKADOKAWAを買収してしまえば、東宝は総合力でいっそう水をあけられるため、こういった大胆な打ち手を本格的に迫られるかもしれない。 ソニーも、KADOKAWAを買えば万事解決というわけではない。 集英社のジャンプ系IPが爆発的なヒットをたたき出すのに対し、KADOKAWAは中規模ヒットのIPをコツコツと積み重ねるスタイルが特徴的だ。実際、「集英社や講談社の原作が強いので、別に(ソニーにKADOKAWAが買われても)よいのではないか」(前出のアニメ会社幹部)と冷めた意見も聞かれる。