最盛期の3%まで減少の「奈良墨」1400年の伝統を守る後継者の挑戦「需要を生んでいくのも仕事」
■木型職人で7代目の中村雅峯さんは「奈良墨」最後の木型職人
木型職人で7代目の中村雅峯さん(92)は、「奈良墨」最後の木型職人として、なくてはならない存在です。 【中村雅峯さん】「虎の毛を表現する彫り方ですけども、力入れたらあかんのやけど、力入れへんと切れへんしね。その力加減が難しさ。コツですね」 その技は0.1ミリ単位の緻密な作業の繰り返しです。 職人歴70年で、今なお、挑戦を続けています。 およそ3ミリのマス目に1000個の漢字を彫る「千字文」 【中村雅峯さん】「自分の力試しというのか、集大成。私の一生の仕事として、残る仕事をやってきたいと思って頑張ってます。納得いくまで、なかなか達しません」
■受け継がれる技術
中村さんには後継者がおらず、この技術が途絶えかけていました。 【中村雅峯さん】「昔は門外不出で『一子相伝』。自分の子どもに伝わっていく。どんどん技術を残していきたいと切り替わって」 門戸を広げたところに、奈良の文化が大好きだという佐藤奈都子さんが弟子入りし、技を未来につなげるため、一から学んでいます。 【佐藤奈都子さん】「彫刻刀自体、学生時代から触ったことなかったんですけど、消えてしまうものにも美しいものを施そうっていう昔ながらの日本人の心意気みたいなのがすごく素敵だなと思って」 【中村雅峯さん】「一品一品できていく喜びは、やった者にしか分からない。楽しい」
■松を燃やして作る煤「松煙」が途絶える危機に
墨の原料となる煤(すす)も、深刻な問題に直面しています。 松を燃やして作る煤、「松煙」が途絶える危機にあるのです。 松煙墨は1400年前から続く日本の墨の原点ですが、職人は、日本にたった1人。高齢で後継者もいません。 そこで、墨職人の長野さんが原料の松煙づくりを自分で受け継ごうと奔走しています。 設備に必要な資金をクラウドファンディングで募っています。
■「需要を生んでいくのも仕事の一つ」
長野さんは、墨の魅力を広めるため、子どもたちに墨の魅力を伝える活動も行っています。 【長野睦さん】「まだ物を見たことあるとか、香りを知ってるとか、そういえばあったなといううちに、価値や背景にあるものとか伝えてないから、当然相手も理解できないし、その物の価値が分からなかったら当然買わないじゃないですか。需要を生んでいくのも自分たちの仕事の一つ」
■後継者、材料、そして世の中の需要、どれか一つが欠けると伝統は途絶える
後継者、材料、そして世の中の需要、どれか一つが一瞬でも欠けると伝統は途絶えるのです。 【長野睦さん】「全く知らないタイミングで知らないところで全く誰にも知られずに終わっていってるっているものは、こういう業界だとたくさんあるので。1400年間続いてきたものなので、なんとか今の時代で、なくなってしまわないように、ちょっとでも、少しでも、先につなげていけるように」 便利な時代ゆえ、見過ごしてしまう本物の価値。失ったことに気づいた時には手遅れかもしれません。 (関西テレビ「newsランナー」 2024年12月25日放送)
関西テレビ
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