世界の頂点に立ったドイツ黄金世代の夢は終わらない。ノイアーが輝かしいフィナーレへ【EURO】
モダンな育成システムの中で育つ
ドイツ代表が波に乗っている。自国開催のEURO2024で注文通りの2連勝。開幕戦でスコットランドを5-1で一蹴すると、ハンガリーに2-0の完封勝利を収めた。ユリアン・ナーゲルスマン監督が目標に掲げる優勝も十分に期待できる結果と内容だ。 【PHOTO】華やかで可憐なスタジアムの華!EUROで躍動する名手たちの妻、恋人、パートナーら“WAGs”を一挙紹介! この好調なチームで躍動しているのが、ジャマル・ムシアラやフローリアン・ヴィルツだ。ともに2003年生まれのアタッカーで、向こう10年はドイツの主力を担ってもおかしくないポテンシャルを誇る。そんな若い世代に多大な影響を及ぼしたジェネレーションが存在する。 2009年のU-21欧州選手権を制した1986~88年世代だ。マヌエル・ノイアーを筆頭とする、その黄金世代の軌跡をあらためて紐解いてみよう。 ―――◆―――◆――― ノイアー、マッツ・フンメルス、メスト・エジル、ジェローム・ボアテング、ベネディクト・ヘーベデス、サミ・ケディラ……。2009年のU-21欧州選手権を制したドイツの1986~88年世代が、14年のブラジルW杯優勝の原動力となったのはあまねく知られるところだろう。彼らは00年に始まったDFB(ドイツサッカー連盟)の育成改革による恩恵を受けながら育った世代である。 かいつまんで言えば、育成改革とは育成システムやトレーニングのモダン化だ。90年代、それまで三度のW杯優勝を誇る大国として君臨していたドイツは、他国の急速な成長と発展を理解しながらも、自分たちが“旧式化”している事実を受け入れられずにいた。そして94年、98年とW杯でベスト8に終わり、EURO00で屈辱のグループステージ敗退を喫する。内容も乏しく、国民をおおいに落胆させた。 06年W杯は自国開催ゆえに大きなプレッシャーに晒されたものの、ユルゲン・クリンスマン監督と、その右腕だったヨアヒム・レーブによるチーム作りが奏功して、ドイツ中を熱狂させる3位入賞を果たした。そこから世界の頂をふたたび目指しはじめたドイツにとって、タレントひしめく86~88年組の出現は願ってもないことだった。 モダンな育成システムの中で育った彼らは、戦術理解とスキルレベルが極めて高く、ドイツにそれまで欠けていたピースを次々と埋めていった。 足下の技術に優れ、最後尾でリベロの役割も担えるGKノイアーの台頭は世界の常識を覆し、フンメルスとボアテング、ヘーベデスのDFトリオは、ドイツ伝統の対人守備能力だけでなく、最後尾からゲームをコントロールするインテリジェンスも兼備。中盤のダイナモだったケディラは高い守備力に加え、ボックス・トゥ・ボックス型のMFとして攻撃に推進力を持たせ、エジルは創造性豊かなプレーで崩しを担い、チームをひとつ上の次元へ押し上げるほど強烈なインパクトを放った。 ドイツはその後、二度のU-21欧州選手権優勝(17年、21年)を成し遂げているが、86~88年組ほどの影響力を持ったジェネレーションは出てきていない。所属クラブを見ても、あの黄金世代の偉大さが窺えるだろう。彼らは若くしてバイエルン、ドルトムント、シャルケ、シュツットガルトといったブンデスリーガのトップクラブの主力を担い、勢いそのままに代表チームの中軸となった。そして14年、24年ぶりの世界制覇に貢献するのだ。
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