『モンスター』は一人ひとりの怪物性をあらわにする なえなのが守ろうとした本当の自分
亮子(趣里)と杉浦(ジェシー)の化学反応に期待
実はシホが「僕の未来」の歌詞を書いたのは4年前で高校3年生の時だった。それはシホの中で伏せておきたい黒歴史だった。年齢を偽っていたのも過去の自分を捨てるためだった。もし盗作じゃないことを主張すれば、今の顔になる前の自分を世間に公表することになる。それは「人生が終わる」ことを意味する。それだけは避けたい。そのためなら盗作したことにされてもいい。 弁護士の亮子は時系列を2年半前にさかのぼることで疑惑を晴らし、過去を隠しておきたいクライアントの意向を尊重した。そのことは亮子も言うように「問題を先送りしただけ」で、シホはいつか捨てたはずの過去と自分がついた嘘に向き合わなくてはならない。シホがロボットだったら、なりたい自分に合わせて好きなだけ自身に手を加えればいい。人間だから自分が自分であること、歩んできた軌跡に縛られる。過去はその人の人生と切り離せない。 タイトルの『モンスター』は主人公である亮子の常人離れした活躍を描くとともに、一人の人間の中に潜む怪物性を指している。現代社会の闇をえぐるドラマになっており、繰り返し観ることで伏線に気づく。第2話で亮子は古参ファンの寺田(本田力)の協力を得るため、ダンスの振り付けを完コピした。第1話もそうだったが、体当たりのリサーチは事件の核心に迫るために必要なものであり、パズルのピースがそろうように事件解決に結びついた。 杉浦(ジェシー)は第2話でも亮子の言動に驚かされてばかりだった。亮子の秘めた力はまだまだこんなものではないのだろう。亮子の思考に杉浦が追いついたとき、あるいは別角度から並走するようになったとき、どんな化学反応が起きるか楽しみだ。
石河コウヘイ