社説:自民「1強」終止符 熟議を通して政治を進めよ
衆院選で、有権者は自民党「1強」の政治に終止符を打った。それは2012年から続いた安倍晋三政権と、その下で党内最大勢力となった安倍派を軸とした強権的な政治に「ノー」を突きつけたともいえよう。 総裁選で自民の正常化を訴えた石破茂首相も、就任後は党にからめ捕られるように持論を変節させ、裏金議員への甘い対処が目立った。責任は免れない。 一方で比較第1党の立場を維持し、公明党と合わせ衆院で45%超の議席を占めた。参院で6割の自公勢力と合わせ、政治の主導権は握ることになろう。 石破氏は来月11日で調整する特別国会の首相指名に向け、国民民主党や日本維新の会を視野に連携を探るようだ。 ただの数合わせに終始するなら、国民はそっぽを向き続けよう。石破氏は、自ら批判していた「安倍政治」を転換し、岸田文雄前首相が安倍派に配慮して形だけにとどめた政治改革を、本気でやり遂げねばならない。 投票率が53・85%と戦後3番目の低さにとどまる中、自民は65議席減の惨敗を喫した。出口調査から、岩盤支持層も愛想を尽かした面が読み取れる。 公明は小選挙区候補11人のうち、石井啓一代表ら7人が落選し、比例票も大きく減らした。 自民裏金議員の大半を推薦し、支持者からも疑問が聞かれた。国民の理解を得ぬまま、連立で進めた防衛費「倍増」なども含め「クリーンな政治」「平和の党」といった結党精神に立ち戻る反省が求められよう。 野党第1党の立憲民主党は野田佳彦代表への交代で保守・中道層に支持を広げ、50議席を上積みした。7議席だった国民は4倍増と躍進した。旧民主党への回帰はあろうが、自公の自滅による消極的支持も否めない。 政治改革でのぶれや大阪・関西万博の費用膨張などで、批判を浴びた維新は大阪以外で縮小した。共産党は小選挙区で213人を擁立しながら後退し、3倍増のれいわ新選組を下回った。有権者の厳しい目線を直視し、修正できるかが問われる。 野党の大半は「政治とカネ」を巡り、衆院選で企業・団体の献金禁止や政策活動費の廃止などを含む政治資金規正法の再改正を打ち出していた。一致点での実現を目指す責務がある。 今選挙で裏金議員46人のうち28人が敗退。反社会的な活動が問題視されていた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)から選挙支援を受けた自民議員も複数落選した。いずれの問題も実態は未解明で、新たな疑惑も浮上している。石破氏は第三者による再調査をはじめ、自民のうみを出し切る必要がある。 内外に課題が山積する中、自公政権が国民の信頼を損ない続け、政治の停滞を引き起こしている責任は重大だ。与野党の熟議を通し、政治改革と政策遂行を急ぐよう求めたい。