瀬戸内に浮かぶ広島レモンの島を元気にする ポッカサッポロ社員自ら耕作放棄地を再生 地域活性化とレモン総需要拡大が目的
大崎上島町も、レモン産地拡大へ独自の支援活動を展開している。 大崎上島町では、2024年までに町のレモン園地を25haから45haに増やすという目標を掲げていた。現在目標は達成され、大崎上島町にあるレモン園地は50haにまで拡大した。 広島県との取り組みでは、“レモン団地”と呼ばれるレモンの園地を整備している。現在、その総面積は約10haとなっている。“レモン団地”では、研修を終えた複数人の営農者がそれぞれ決められた区画で作業している。 坂田課長は「複数の農家さんが協働で取り組むことで、助け合って成長できる。水を引くパイプラインなどの設備も、一か所に整備して複数人が使うことで、事業費が少なく済みコスト面でもメリットがある」と語る。
ポッカサッポロは、レモンの可能性を広げるためにレモンそのものの研究も行った。 研究園地でレモンと他の柑橘を掛け合わせた7種類の交配種を、およそ3本ずつ植えて育成。八朔と掛け合わせた新品種が登録の対象に決まった。 髙寺氏は「2016年3月から広島県の農業技術センターと協力して、交配種の研究に取り組んだ。2021年に交配種の評価が終わり、現在では広島県が品種登録の出願をしている」と説明する。 持続的な国産レモンの生産には消費拡大が欠かせない。ポッカサッポロは啓発活動にも注力し、レモンの魅力を発信している。 2023年10月には、これまで社員のみが受けていた「レモン検定」を初めて一般向けに開催。上位合格者のうち5人を、大崎上島のレモン収穫体験に招待した。 食育活動では、飲用だけでなく料理のシーンでもレモンをより活用してもらうため、レシピの紹介なども継続して行っている。レモンの栄養やおいしさを消費者に伝えていくことで、需要拡大につなげていく。 土屋氏は「レモンサワーブームや瀬戸内レモンブランドの定着で、国産レモンの需要は増加し耕作地も増えたが、消費者には、レモンの機能価値や魅力がまだ伝わりきっていない。川上で見つけた知見を活かしたり、付加価値化を促進したりすることでレモンの価値をより高めていきたい。川上から川下までレモンの市場で一気通貫の取り組みを続けていく」と抱負を述べる。