国内最長路線バス170キロを乗り通してみた 和歌山~奈良、運転手は26年専属ベテラン
「災害以降、お客さんが減った気がする」と景山さん。奈良交通に確かめると、2009年の利用者は年間約13万人いたが、2021年には約7万人に。十津川村によると、沿線の人口減少や高齢化は明らかに進行している。細い旧道で集落に入り、年間で数回しか乗降がないという停留所もいくつか経由した。 出発から約6時間。夕暮れが迫る中、五條市の五條バスセンターに入り、3回目の休憩を取った。しばらく市街地を進む。終点はもうすぐだ。 景山さんは、新宮―大和八木間を2日かけて1往復する乗務を続けている。「もう飽きを通り越した。この路線に乗務できて誇りに思う」と話す。「帰宅が2日に1回という適度な距離感が、夫婦長続きの秘訣かもしれない」と笑った。 乗務の魅力は何かを尋ねると、「新宮に無事帰って来られた時の達成感ですかね」との答え。地元の利用者が減る一方、最長路線を乗り通すために訪れる乗客は増えている。今なら私にも分かる気がする。運転手と乗客で、同じ達成感を共有しているのだろう。
午後5時13分。19分遅れて、終点の大和八木駅に到着した。あたりはすっかり暗い。景山さんとバスは、一夜を明かす葛城営業所に回送して行った。 ▽八木新宮線 奈良県橿原市の近鉄大和八木駅と和歌山県新宮市のJR新宮駅169.85キロを結ぶ路線バス。高速道路を使わない路線としては日本最長。停留所は168カ所ある。1日3往復運行し、運賃は全区間を乗り通すと6150円。所要時間は6時間半~7時間。