平和の回復願うG20首脳宣言 ロシアなど責任の所在は追及せず
【リオデジャネイロ=平田雄介】20カ国・地域(G20)の議長国ブラジルが18日公表した首脳宣言は、「ウクライナでの戦争」が、人的被害やさらなる食料、エネルギー安全保障、サプライチェーンなどへの悪影響をもたらしていることを強調した。 また、世界で起きている紛争や戦争に関し、すべての当事者に国際人道法や国際人権法の下での義務を順守するよう強調し、「民間人とインフラへのすべての攻撃を非難する」としたのは、平和の回復を願うものといえる。ただし宣言は、ウクライナを侵略するロシアや、パレスチナ自治区ガザ戦闘の発端となったイスラエル奇襲攻撃を仕掛けたイスラム原理主義組織ハマス、ガザで4万3千人超を殺したとされるイスラエルを名指しして非難していない。 AP通信は、85項目22ページにわたる長文の宣言の内容を「戦争を非難し、平和を求めるが、誰も責めない」と指摘した。それは、昨年の議長国インドがまとめた宣言にもあてはまる。 G20は、先進国だけで解決できない地球規模課題に新興国が協力して対応するのが目的。立場の違いを乗り越えて一致点を見いだす努力は必要だ。 しかし、国連憲章の堅持を掲げる一方で、ロシアの不当な侵略行為を責めない宣言の内容は、日本や米国などの先進国の立場とかけ離れている。 もっとも、米政府筋は18日朝、あきらめの表情を浮かべていた。「G20の首脳宣言のとりまとめは、同志国が集まる先進7カ国(G7)のようにはいかない。ロシア非難はなしで、という国がある」。 宣言は、19日午後の閉幕まで丸1日を残して合意に至った。かねて米国が主導権を握ってきたG20の方向性は、ブラジルやインドなど新興国の台頭によって変化の局面を迎えている。 来年の議長国は、ロシアから武器を調達する南アフリカ。一昨年2月24日のウクライナ全面侵攻開始当初から、対露非難を控え、対露制裁にも加わらない新興国がG20をリードする。