プロが好むのは “やさしいウェッジ? ” プロから厚い信頼を誇るカスタムウェッジの魅力を「グラインドスタジオ」都丸和寛氏に聞いた
思った通りの高さが出せるウェッジ
「僕は“スピンが入る”よりも“寄る”ウェッジのほうがいいと思っています。それに加えて、一番は思った通りの高さが出せること。低く出せば低く、高く上げようとすれば高く出る。そんなクラブを作りたいと思っています」 個人の好みに合わせて削れるように、削る前のクラブの原型を50gほど大きくしているという。その50gを削ることで個人にカスタマイズしていくのだ。 「R&Aのルールがあるので、先にスコアラインをレーザーで刻み、大体の形を整えたものから削っていきますが、その前に自分が使ってみてよかったものや、バウンスやシャフトは同じにしてソール形状の違うものを5本くらい送って、実際に打ってもらいます。そしてどれがよかったかをヒアリングしながら、『もっとこうしたい』という要望も入れ込みながら削っていくんです」 「僕はネックを曲げながら削っていきます。曲げて、削って、また曲げての繰り返し。そうやって削っていくので、最後の形を頭のなかでイメージできていないとできない。削るだけなら誰でもできますが、曲げながら完成品にしていくのは難しいと思っています」
同じように作っても使う人には違って見える
青木瀬令奈をはじめ、プロにも多くの使用者がいるが、まったく同じものは作れないという。
「プロとも話し合って作りますが、実際に打ってもらうと、『確かに私のリクエスト通りなのですが、前のほうがよかった』とか、感覚が合わないことがよくあります。意見を取り入れて自分では“最高のものができた”と思ったものがダメで、“ちょっとこれは違うかな”と思ったものが気に入られることもある。また、青木瀬令奈プロには毎回同じものを3~4本持っていくのですが、そのなかで選ばれるのは1本だけ。同じように作っているはずなのですが、本人には1本ずつちょっと違って見えるらしい」 「光の反射の具合が少し違うのかもしれないし、スコアラインは機械加工で入っているのですが、セッティングしたときに0.2㎜とか若干、傾いている物もある。そうするとスコアラインに合わせて削るしかないので、フェースが閉じて見えたり開いて見えたりするものもあるんです。そういうのも同じように削っても同じように見えない要因なのかもしれません。ただ、30年やっていますが、その違いの感覚は正直、何となくしか僕にはわかりません(笑)」 PHOTO/Takanori Miki、Akira Kato ※「週刊ゴルフダイジェスト」 2024年6月25日号「日本のクラブ名匠」より一部抜粋
週刊ゴルフダイジェスト