プロが好むのは “やさしいウェッジ? ” プロから厚い信頼を誇るカスタムウェッジの魅力を「グラインドスタジオ」都丸和寛氏に聞いた
1カ月でひとりで研磨できるまでに
「フォーティーンに入ってすぐに研磨を教えてもらい、1カ月後にはひとりでできるようになりましたね。すると3カ月後には社員にしてもらえました。ただし、研磨といっても、今、僕がやっているのとは違い、ほぼ完成品に近いものから調整していく程度。それでも、すごく忙しかったし、充実していました。そのうち、もう少し大きい形から削り出す注文が増えてきて、プロゴルファーにプロモーションをすることも。プロの意見をいろいろ聞いているうちに、現在の形が何となく浮かんできたんです」 12年間フォーティーンで仕事をして経験を積んだ都丸氏。「T28(テツヤ)」の愛称を持つ原口鉄也に作った都丸氏の「MT CUSTOM」が「MT-28」と命名され、絶大な人気を誇るが、独立することになる。 「フォーティーンが『工房ではなく、メーカーを目指します』って方向転換をしたんです。そのことが独立のきっかけでした。初めは自分のブランドを立ち上げるなんて考えてもいなくて、フォーティーンを使用しているプロのクラブを外注で担当させてもらっていました。そのうちに自分の構想が固まってきたので、1年ほど経ってからグラインドスタジオを始めることにしたんです。それから、もう20年経ちますが、腕がよくなっているのかは自分では分からないですけど、明らかに仕事が早くなっているという自覚はあります。でも相手が何を求めているのかは、いまだにすぐには分からない。やっぱりその人のためにクラブを作るには、コミュニケーションが大切だと思います」
やさしいと感じるクラブは人それぞれ
都丸氏が考えるやさしいウェッジとはどんなウェッジなのか。「見た目が少し大きくて、ソールが広くて、グースが入っていて……というのがやさしく見えるとは思いますが、万人に合うやさしいウェッジはないと思っています。そのプレーヤーのスウィングタイプもありますし、打ちたい球も違う。バウンスは大きいほうがいいのか、小さいほうがいいのか、ソール形状の好みにも個人差があります。プロが使っているものは、やはり自分が使いやすいものを選んでいるのだと思います。同じプロでもバウンス6度と少ないものから、最初の立ち上がりだけ20度くらいつけてほしいという注文もあります。 ドライバーなど長いクラブはスピードを出して振ってしまえば、感覚はそれほど変わらない。でも、ゆっくり振るとソールが地面に当たった感覚をどうしても感じてしまう。だからウェッジは自分に合わせるしかないんです」