【イベントレポート】ジョニー・トーが入江悠と対談、香港映画の未来と“脚本を用意しない”伝説の真相語る
映画監督のジョニー・トーと入江悠が、本日10月31日に東京・LEXUS MEETS...で行われた「国際交流基金×東京国際映画祭 co-present 交流ラウンジ」に出席した。 【画像】ジョニー・トー 監督のみならずプロデュースを含め、数多くの作品を生み出してきた香港ノワールの旗手、ジョニー・トー。今回の第37回東京国際映画祭には審査委員として参加している。ジョニー・トーの大ファンだという入江は「香港映画で育った子供時代でした。大人になり、ジョニー・トー監督の『ザ・ミッション 非情の掟』を観て衝撃を受けました」と回想。さらにジョニー・トーがゆうばり国際ファンタスティック映画祭2010で審査委員長を務めたことに触れ「そのときは緊張して話せなかったのですが、監督が吸い終わった葉巻を1本家に持って帰りました(笑)。こうして隣でお話ができるなんて、光栄です」と明かした。 入江は「時間がなくなる前にどうしても聞きたいことを……」と切り出し、「ジョニー・トー監督には脚本を用意せずに映画を撮るという伝説がありますが、本当ですか?」と尋ねる。ジョニー・トーが「そうですね、私が撮った映画のうち10作以上は脚本がありません」と回答すると、入江は驚きながら「どのように演出するのですか?」と質問する。ジョニー・トーは「僕はそもそもキャスティングの際、アドリブに対応できるかどうかを重要視します。選んだ役者の皆さんは3分の1くらい撮影していると、僕が何を求めているのかわかってくるのです。これは私のやり方ですから、若手の監督にはお勧めしません(笑)。シーンの撮り方について事前に想像しているのは私だけで、役者は何も知りません」と笑顔を見せた。 またジョニー・トーは「この場を借りて黒澤明監督にお礼を申し上げたいです」と述べ、「私の映画の正解は黒澤監督から学んだものです。彼の作品で素晴らしいと思うのは、状況や環境を用いて映画の雰囲気を作り、盛り上げるところ。作品の“テンション”を作るのがすごく上手なんです。観客に『次に何がくる?』と追いかけたくなるような気持ちを与えています」と語る。また自身の映画作りのペースに関して質問されると、ジョニー・トーは「3作同時に撮影することもあります。ただ、私はインスピレーションが湧かないときには撮りません。今も映画を撮っていますが、クランクインして2日で撮影をストップしました。その後3カ月間放置してまた撮ることにしましたが、1日撮ってまたストップしています(笑)。何本も同時に撮る際はそれぞれ、路線に明確な違いがあります」と答えた。 続いて話題は、ジョニー・トーが率いる製作プロダクション・ミルキーウェイに。ジョニー・トーは「ミルキーウェイを設立したのは1996年。その前年、私は何も映画を撮りませんでした。どういう映画を撮りたいのか、なんのために映画を撮るのか、興行的に成功する監督になりたいのか……1年間考えたんです。やがて会社を設立することになりますが、それは映画界でどう生存していくのか自分自身に言い聞かせたかったからです。この会社で、オリジナルのクリエイティブな作品を作っていかなければと思いました」と述懐した。入江が「映画を撮らなかった1年間はどのような活動をしていたのですか?」と質問すると、ジョニー・トーは「レコードのプロデュースをしました。本当ですよ」と答え、観客を驚かせる。 香港で短編映画祭を主催するなど、若手映画監督の発掘に貢献してきたジョニー・トー。彼は「香港の映画界は若者を応援することに労力を惜しまないので、感謝しています。私が若手の頃はさまざまな映画会社がありましたが、今は状況が変わっています。政府からのサポートはありますが、それだけでは夢のスケールが大きくならない。香港映画に投資する人が増えて、未来が明るくなることを期待しています」と伝えた。