社説:単身高齢者の増加 家族頼みでない支援が急務
少子化や未婚の増加により、単身で老後を過ごす人が増え続けている。安心して暮らすには、家族という単位にとらわれず、公的サポートの充実や地域での支え合いを促す仕組みづくりが急務だ。 2050年には5世帯に1世帯が高齢者の1人暮らしになるとの国の推計が示された。国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上の単身世帯は1084万に達し、全世帯に占める割合は20年の13%から20%へと上昇する見通しだ。 高齢単身世帯の増加は特に地方で目立つ。京都府では20年の17万世帯が45年には24万世帯に達する。高齢者人口に占める独居率も50年には30%を上回る。 滋賀県でも20年の6万世帯が50年には11万世帯となる。とりわけ75歳以上の単身世帯は20年から倍増し、全国2位の伸び率を示す。 高齢になるほど認知機能や体力低下が懸念され、家事や財産管理、医療・福祉の利用などで支障が生じやすい。1人暮らしを支えるには、地域での見守り活動がますます重要になろう。4月に施行した孤独・孤立対策推進法も踏まえ、実効ある取り組みが必要だ。 ただ、現役世代が減少し、支え手不足は深刻化している。 地域での見守り活動を支える民生委員は担い手が減り、22年度末には全国で1万3千人の欠員が生じた。京滋でも定員に満たない自治体が増えている。厚生労働省は、委員の選定要件の緩和などで人材確保を模索するが、活動の先細りを食い止める対策が欠かせない。 住民間のつながりやボランティアも支えたい。京滋で地域福祉を充実させる活動が広がっているのは心強い。 大津市北部の住宅地「びわ湖ローズタウン」では、住民有志が「見守り隊」を結成。地域を巡回して積極的に声掛けをし、困り事に耳を傾ける。顔の見える関係を築いた上で、災害時の避難計画づくりも進める。 京都市左京区では、警察に保護された認知症の人を迎えに行く活動を柱とする一般社団法人が発足した。高齢者が気軽に立ち寄れる居場所づくりも進め、さまざまな人が緩やかにつながれる地域を目指すという。 一方、身寄りのない高齢者らに身元保証などのサービスを提供する「高齢者終身サポート」の需要も高まっている。 法的な規制がないため、消費者トラブルも多い。政府は6月、事業者が守るべき指針を公表した。公的な認定制度などルール整備が急がれよう。 単身者が増えれば、家族が行ってきたサポートを社会全体で担うように見直すことは不可欠だ。介護保険などの社会保障制度や住宅支援のあり方から、民間事業者の役割、地域での助け合いまで、多様な仕組みを充実させたい。