25歳で現役引退、女子プロGKから転身した写真家・福村香奈絵の思い「キャリアにファーストもセカンドもない」
【企画から撮影、開催まで手がけた個展が大成功】
―――フォトグラファーに転向してから、一番印象的だった仕事はなんですか? 福村 2023年10月の個展は間違いなくその一つです。もともと、「カメラマンになる」と決めた時にやりたいことが3つあって、1つが「雑誌に載る写真を撮る」ことで、2つ目が「広告の写真を撮ること」、3つ目が「個展を開くこと」だったんです。雑誌はいい仲間に巡り合えて、企画から編集、撮影、印刷まで携わって作品を作ることができましたし、広告写真も、2022年に岩渕真奈さんの鈴廣かまぼこ大使就任リリースのスチールを担当させていただいたので、最初の2つは意外とすんなりクリアしたんです。最後の個展は、恵比寿の展示スペースで、「女子サッカーを愛する私たちの現在地とこれから」をコンセプトに主催したんです。ただ、開くために何をしていいかまったくわからないゼロからのスタートだったので、本当に大変でした。 ―――企画から撮影、会場設営などもご自身で? 福村 はい。そのために昨夏の女子ワールドカップに行って撮影して、開催まで全部実費でやりました。ただ、会場やレイアウト、印刷物の紙一つとっても、細かいところまでイメージができていなかったので、実績のあるデザイナーさんやプロデューサーさんに一から教えてもらって、実現しました。そういう方々に十分なお支払いができず心苦しかったのですが、「意義のあることだからいいよ」と言ってくださって。他の仕事と並行しながら夜に写真とか文章を作成して、睡眠時間を削るのはしんどかったですが、本当にやってよかったです。 ―――福村さんの写真は、人々の表情や、観客席の切り取り方など、動きがあってビビッドな作品が多いですよね。構図の決め方などは現役時代の経験も大きいですか? 福村 そうですね。撮影するときには割と人の感情の起伏が感じられる瞬間を切り取ることが多くて、どういう思いでこういう顔をしているんだろう?と想像するのが面白いんです。スペインの時のチームメートは常に喜怒哀楽を100%で出す感じで、試合で負けたらすぐに泣いたり、その後ロッカールームに戻ったらめちゃくちゃ爆音で踊っていたり(笑)。そういう、「人」の面白さを感じた経験は生きていると思います。 ―――個展にはどのぐらいのお客さんが来たのですか? 福村 予想以上に多くの方が来てくれて、本当に驚いんたんです。女子サッカーの愛を語れる空間を作りたかったのですが、サポーターの方や女子サッカーが好きな方、毎日新聞で取り上げていただいた記事を見た方などが、4日間、絶えることなく来てくれました。一人一人の滞在時間も長くて、お客さん同士がつながったり、リピートしてきてくれた方もいたので、すごく嬉しかったです。