相次ぐクマ被害どうする!? “保護”か“駆除”かで揺れる対応 一時絶滅の危機も過去最多に増加【島根発】
動物と人間の住み分け 実現難しく
こうした中、国や県が進めてきたのが「ゾーニング」という考え方。 人里から離れたクマの「保護地域」と、人間の活動を優先する「排除地域」、その間となる「緩衝地域」。これらを明確に分けて動物と人間の住み分けを図ろうとしている。 しかし、簡単に実現できるものではなく、クマと人が暮らすエリアの線引きは年々曖昧になりつつあるという。 「出会った瞬間、『あ、もう死んだな』って」とクマに遭遇した当時の思いを話したのは島根・浜田市に住む宮本優さん。2023年11月に新聞配達の仕事中にクマに遭遇した。 持っていた新聞紙で追い払い、九死に一生を得た。その後、捕獲されたものの、恐怖心は残っているという。 宮本優さん: またクマが檻(おり)に入ったと聞いた。安心はしたけど、常に不安はずっとありますよね。クマにまた出くわすのではないかと 宮本さんが襲われた場所の近くに捕獲用の檻(おり)が設置されると、約2週間で2頭もクマが捕獲されたからだ。 クマを引き寄せたとされるのが、「柿の実」だ。かつては実が収穫されていたが、柿などの果樹が放置されてしまうケースが増えていて、これが害獣のエサになってしまっている。 島根県は、優先度が高い地域から撤去費用を負担し伐採しているものの、2023年度の事業費は約100万円で、対応できたのはわずか5件だった。 専門家は、ツキノワグマの指定管理鳥獣への追加で、国が人里へ寄せ付けないための対策を支援する必要があると指摘する。 東京農工大学大学院・小池伸介教授: 現実としてクマの生息地と隣り合っているような集落は、本当に高齢化して、力も限られているわけです。その集落に対策をしてくださいと言ってもできないわけです。そういう環境整備、誘因物の除去など公費を使ってやっていく制度にするのが望ましい 「保護」するのか、それとも実際に人的被害が増えているから「駆除」するのかが、難しい課題となっている。