どうすればイスラエルの侵攻は終わるのか…現地を知る戦場記者が考える紛争終結への糸口と報道だからできること
2023ニッポンの悲鳴#7《後編》
2023年、悲鳴があがったのは日本だけではない。世界でも多くのさまざまなが悲鳴が巻き起こり、なかでもイスラエルとパレスチナの戦争は多くの悲しみを生んだ。しかし、自身の生活で精一杯な状況にある日本人にとっては、遠い異国の悲劇という側面もある。その距離感を少しでも縮めるべく、戦地の取材を続けるTBS記者の須賀川拓氏に話を聞いた。(前後編の前編) 【写真】ガザの国境付近から報道する須賀川氏
中東情勢の報道で何を信じればいいのか?
――今回の戦争に対する日本国内の反応を見て、感じることはありますか? 極端な二項対立になってほしくないということはずっと思っています。「ふざけんなよ、ハマス」とか「イスラエルこそテロ国家だ」って言い切ってしまうほうが、気持ちの整理がつけやすくて楽ですが、世の中そんなにシンプルではなくて。むしろほとんどがグレーじゃないですか。 だから、パレスチナ寄りの人であろうと、イスラエル寄りの人であろうと、もうちょっと対話ができるといいなと思っています。お互いに虐殺をされている当事者同士が分断するのはもう仕方がないと思いますが、周りがそれを煽ってしまうと収拾がつかない。そこは我々の情報発信が大切になってくると思っています。 ――今回のことで、改めてイスラエル・パレスチナの問題を調べてみましたが、それぞれに根深い歴史があり、識者たちも自分の立場ありきでコメントし合っている印象を受けました。正直、何を信じていいのかわからない、という気持ちもあります。 「何を信じていいかわからない」というのは、正常な状態だと思います。たぶん、ひとつだけを信じるってことはないんですよ。イスラエルのナラティブ(物語)で考えれば、それこそ何千年もさかのぼる悲劇の民族があり、それは歴史上のファクトだから、絶対に否定してはいけないことです。今回の戦争で、イスラムフォビアが広がることが懸念されていますが、実はそれよりもやばいと懸念しているのが、反ユダヤ主義です。 それこそ、ドイツでハーケンクロイツがいきなり壁に描かれたり、ユダヤ人の家にダビデの星がスプレーされたり。本当にあってはならない話です。悲しいことにイスラエルが攻撃をして、パレスチナ人が死ねば死ぬほど、反ユダヤ主義は拡大していってしまうんですよね。