ゴルフ全米女子オープンで広がった「日本の波」 笹生、渋野の活躍に繋がる強さの源流とは
LPGA小林浩美会長の大きな功績
どこまで遡るのかと問われたら、世界の舞台に早い時期から挑んだ樋口久子や岡本綾子といった「草分け」たちの存在まで遡るべきであろう。 そして樋口や岡本に続いて渡米して腰を据えて米LPGAに挑み、帰国後は日本のLPGAを率いる小林浩美会長の功績は大いに賞賛されるべきである。 選手として1990年から米LPGAで戦った小林会長は、「アメリカの波」も「ボーダーレスの波」も「韓国の波」もすべてを自ら目撃・実感し、その中で孤軍奮闘しながら4勝を挙げた。その貴重な体験とそこで得られた知見を、JLPGA会長となった2011年からは日本の女子ゴルフ発展のために惜しみなく活用してきた。 2013年からはJLPGAに世界基準である4日間競技を増やし、日本ツアーと世界の舞台の差を減らすことを目指してきた。下部ツアーであるステップ・アップ・ツアーのテコ入れも図り、2011年は2日間競技のみ5大会だったものを17年には21大会へ拡大。そのうちの15大会は3日間競技に変更された。 というのも、3日間競技が10大会以上になれば世界ランキングの対象となり、選手たちが世界における自分の位置づけを知ることができる。小林会長はそれが若い選手たちのモチベーション・アップにつながることを十数年前から考え、そのための努力や工夫を続けてきた。
「日本の波」をさらに広げられるように
そうした地道な取り組みのおかげで日本の女子ゴルフ界にはスター選手が徐々に増え、どんどん育ち、相乗効果でますます増えて大きく育った。その結果、今年の全米女子オープンで「日本の波」が一気に広がったということなのだと私は思う。 遡れば、「日本の波」の貢献者は日本のすべての先人たちであり、今、大きく花開いたことを誰もが喜んでいることだろう。 ただし、かつての大きな波がすぐに別の波に取って代わられたように、ゴルフ界の大波は入れ代わりも移り変わりも早いのが特徴である。うかうかしていると、どんなに大きな波とて、あっという間に姿も形もなくなってしまう。 せっかく広がった「日本の波」を絶やさず、さらに広げられるよう、みんなで盛り立てていきたいものである。
舩越園子(ふなこし・そのこ) ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。 デイリー新潮編集部
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