入山杏奈&高柳明音「あの時代があるから頑張れた」48グループで培った強靭なメンタル
脚本家で俳優の宅間孝行が作・演出を手掛けるエンターテインメントプロジェクト・タクフェスの第11弾となる舞台「晩餐」が10月から12月にかけて、埼玉、仙台、大阪、札幌、名古屋で上演され、12月8日(金)から17日(日)まで東京公演がサンシャイン劇場で行われる。本作は2013年に初演をした後、一度も再演をしておらず、今回はタクフェス10周年を記念しての上演となる。ヒロイン・山科舞子をWキャストで演じるのが、元AKB48の入山杏奈と元SKE48の高柳明音だ。3作目のタクフェス参加となる入山と、今回初めてタクフェスに参加した高柳に、本作の見どころを聞くと共に、それぞれに2023年を振り返ってもらった。 【写真】入山杏奈が笑いあり涙ありのタクフェスに3度目の出演 ■高柳明音「絶対に自分にとってプラスになる」 ――お二人は急きょ代役での出演が決まったという経緯ですが、お話を聞いた当時はどのように感じましたか? 高柳:急だったので、稽古期間も(実質)1週間くらいだったんです。それで、2013年の初演の映像を見た上で、自分の気持ちを整理できる時間を1日だけ頂きました。当時の映像を見たら、本当にすてきな作品だと感じましたし、私にとってもこれまでにあまり参加したことのなかったタイプの作品だったので「絶対に自分にとってプラスになる」と思いました。 稽古期間も短いし、宅間さんは厳しい方だと聞いていたので「耐えられるかな」とは思いましたが(笑)、こういうタイミングで声を掛けてくださったことはとてもうれしかったし、それに応えたいなと思って受けさせていただきました。 入山:私も同じように1日、時間は頂きましたが、私は「晩餐」がどういう作品かということには実はあまりこだわっていませんでした。これまで「歌姫」「天国」とタクフェスに出演させていただいて、(宅間さんの)他の作品も見てきたということもあって、宅間さんの書く作品には絶対的な信頼があったので。 ただ、スケジュールは本当に厳しくて、今回の稽古中に他の作品の本番をやっていたので、「本当にできるのか」という不安はありました。タクフェスは私にとっての初舞台でもあったし、恩のある宅間さんが求めてくれるなら、という気持ちで腹をくくりました。 ■入山杏奈「火事場の底力的なものはあるんじゃないかな(笑)」 ――これほど短い稽古期間で本番に臨むようなことはあるものなのでしょうか? 高柳:最短では、コロナ禍にできるだけ人を集める機会を少なくするため、3日の稽古ということがありました。何度かお世話になったことがある演出家さんだったので「高柳ならできるだろう」と声を掛けていただいたんです。 入山:厳しいスケジュールの時には、「48時代の経験が生きているな」と実感します。当時は桁違いに忙しかったので。 高柳:本当にそう。あの時代があるから頑張れたというところもあります。 入山:当日の朝に振り入れしてコンサートとかMV撮影とかもあったので、火事場の底力的なものはあるんじゃないかなと思っています(笑)。 ――48グループ出身の方は、むちゃ振りに強い面があるのかもしれないですね。 入山:そういう人が多いと思います。 高柳:メンタルは強くなっていますね(笑)。 ■同じ役を演じる2人、互いの演技を見て涙 ――Wキャストで出演するにあたって、互いにやりとりする機会も多いのでしょうか? 入山:常に情報共有をしています。 高柳:脚本にどんどん変更点が出るんです。せりふが変わったり、カットになる部分があったり、増えた部分があったり。 ――お互いのお芝居を見る機会もありますか? 高柳:先日の大阪公演は、昼に杏奈ちゃんが出演して、夜公演に私が出演する日だったので、少し早めに入って杏奈ちゃんの公演を見てから自分の公演に出ました。せりふも動きも全部分かっているはずなのに、最後にはボロボロ泣いていました。 入山:私は本番をまだ見られていないんですが、稽古場で見ただけで私も泣いていました。 高柳:一度物語を知った上で見ると、初見では笑えるシーンがグッときたりするんです。 入山:本当は泣きどころじゃないようなところでボロボロ泣いたりしていましたね(笑)。 ――大阪公演からは主演が永井大さんに変更となりました。作品への影響は大きかったですか? 高柳:とても変わりましたね。 入山:「お芝居ってすごく人柄が出るな」と感じました。永井さんの演じる純ちゃん(高槻純二役)は、より愛に満ちている感じがします。永井さんご自身の人生経験が反映されているところもあるのかもしれませんが、やっぱり違いますね。永井さんってちょっと純ちゃんっぽいところがあるような気がするんです。 高柳:永井さんに決まった時、私が30代で杏奈ちゃんは20代、永井さんは40代なのでどう見えるんだろうということもあったんですけど、すごく若々しい方なんです。純ちゃんって、30代前半か半ばくらいの設定だと思うんですが、全然違和感なかったですね。 ■未来と過去、行くとしたらどっち…? ――この作品にはタイムマシーンが登場しますが、お二人は未来と過去、どちらに行ってみたいですか? 入山:私は過去ですね。未来は楽しみにしていたいので見たくないです。「自分の選択がこのゴールに向かっているんだ」と思いたくないんですよね。過去だったら、もう会えなくなってしまった人に会えたりもすると思うので。 ――どの時点の過去に行ってみたいですか? 入山:子どもの頃ですかね。私、父が去年亡くなったんです。だから、自分の父に会いに行きたいという思いがすごくあります。小学生とか中学生くらいの時には反抗期であまり仲良くなかったりもしたので…(笑)、それ以前の時代に戻ってみたいです。 高柳:私は反対に未来ですね。過去に戻って自分が何かをしたことで、今が変わるのが怖いんです。だから、私は未来をゴールと思わず、より良く変えられる可能性があると思って行く気がします。例えば、もし地球がどうにかなっちゃうとしたら、今を必死に生きようと思うだろうし。 ■入山杏奈、メキシコで「そんなに頑張らなくてもいいんだな」と学んだ ――まもなく2023年も終わりますが、お二人にとってはどんな年でしたか? 高柳:すごく充実していました。コロナ禍の制限が落ち着いたことでファンの方と交流を深めるイベントもできたし、お芝居もたくさんさせていただきました。 ドラマではテレビ東京の「推しが上司になりまして」というドラマに出演させていただいたんですが、連続ドラマに出演することが本当に久々だったんです。映像のお芝居もこれからやっていきたいという思いもあるので、すごく勉強になりました。 この年末にはタクフェスが決まったことですごく大変でしたが、自分の成長につながる時間を頂けているなと思います。 ――高柳さんは2024年にやりたいことはありますか? 高柳:旅行をしたいですね。海外にずっと行けていなかったので、見て、感じて、得られるものをもっと増やしたいなと思います。お仕事では、今年は映画に出られなかったので、映画に挑戦できたらいいなと思っています。 ――入山さんの2023年はどうでしたか? 入山:2023年はやりたいことのほとんどをできました。国内でも国外でも旅行をしたし、メキシコにも長期滞在できて、仕事もできました。日本に帰ってきて、日本でお芝居をすることもかないましたし、甥っ子ともいっぱい遊べました(笑)。移動が多かったのでバタバタではありましたが、楽しかったです。 ――メキシコとの二拠点での活動はこの先も続けていく予定ですか? 入山:そうですね。ただ、オーディションをリモートですることもできるので、受かったらメキシコに行くというスタイルにすることも考えてはいます。 ――今後、メキシコ以外の国で活動していくこともあるのでしょうか? 入山:スペイン語圏だったらありですね。ただ、スペインのスペイン語は全然違ったりするので、中南米のメキシコからアルゼンチンあたりの範囲で何かお仕事があればという感じです。 ――やっぱりメキシコに対する愛着は強いですよね。 入山:メキシコ大好きです。サルサを踊って、タコスを食べて、ビールを飲んで、家に帰って寝るという生活がすごく好きなんです(笑)。メキシコに行って、人生観が本当に変わりました。日本の人って頑張りすぎちゃうところがあると思うんですが、「そんなに頑張らなくてもいいんだな」と学びました。人生が楽になります。 ――おおらかな方が多いんですね。 入山:未来のことを考えて苦しくなってしまうようなことはあまりないですね。みんな、木曜日から始まるパーティーのことしか考えてませんから(笑)。木・金・土とパーティーをして、日曜日は休んで、また月曜日から仕事するんです。 ――そうなると、2024年にやりたいことは…? 入山:本当に考えてないんですよね(笑)。今みたいにやりたいことをやれて、楽しく生活できたらいいかなという感じです。 ■高柳明音「開演20分前には絶対に入ってほしい」 ――では、改めてお二人が思う「晩餐」の見どころなどを教えてください。 高柳:私は普段、舞台を見に行く時は始まる10分前くらいに入ることが多いんですが、この作品は20分前には絶対に入っておいていただきたいです。20分前から前説が始まって、お客さんとの交流が始まるんです。宅間さんも出てきたり、ジャンケン大会があったりして、キャストのサイン入りのお菓子やジュースがもらえたりもします。舞台って見る方も緊張してしまうことがあると思うんですけど、そこから楽しんでもらえると、自然と本編に入りやすいと思います。 私は地元の名古屋での公演もあったんですが、名古屋弁で役を演じているところも新鮮なんじゃないかなと思うので、そこも楽しんでいただきたいです。お芝居で名古屋弁を話しているうちに、最近は私生活でも名古屋弁がよく出るようになってきました(笑)。 入山:物語の序盤では、まさかこの作品に泣かされるとは思わないと思うんです。だからこそ、逆に気負わないでほしいというか、「泣きたくて見る」とか「泣かされに来た」と思わずに、純粋に目の前で起こってることをただ見てほしいです。皆さんが経験してきた何かに重なる部分がきっとあると思うので、そういうところでグッと来たりするんじゃないかなと思います。 初めて舞台を見る方でも見やすい作品だと思うので、肩の力を抜いて楽しんでいただければうれしいです。本編が終わった後にはダンスタイムがあって、動画撮影をできたりもするので、今年最後のエンタメの思い出作りに、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。 ◆取材・文=山田健史