小島秀夫監督&盟友ファティ・アキン監督が対談『RHEINGOLD ラインゴールド』は現代人の閉塞感を打ち破る!
「この作品を撮っていた時はちょうどコロナ禍でした。その頃はみんな、映画館が終わってしまうんじゃないか、ストリーミング配信の黄金期になってしまうんじゃないか……と話していた。しかし僕は、そうした未来を一切信じていなかった。だからこそ、この作品はチケット1枚で4本分の映画を楽しめるような、中身がぎゅっと詰まった(劇場で観るのに)ベストな一本になりました。観客の皆さんにも、次々と違うジャンルの映画に引き込まれていくような体験を味わってもらえると思います」
そんなアキン監督の思いは、作品を通して小島監督にも伝わっていたようだ。「ラッパーの姿を借りながら、ファティが『俺はこんなことが好きなんだ』『これが映画なんだ』といった思いを伝えている気がして、同じくエンタメを作る人間として、素直に嬉しかったんです。コロナ禍で4年ほどファティと直接会うことができなくなり、どうしているか心配していたのですが、その間にこれほどの映画を撮った彼のことを、心から誇らしく思いました」
デ・ニーロを思わせるスターの誕生!
小島監督の作品について「同じ映画好きだからこそ、小島監督の作品に映画から受けてきた影響を感じることができるんです」というアキン監督は、「僕の作品も同じ。例えば、十代のカターが駅でチンピラを殴りつけるシーンは、パク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』(2003)の(長回しワンカットの)ファイトシーンに影響を受けている。『オールド・ボーイ』のシーンほど尺は長くないけどね」と告白。 「ほかの映画の影響をあえて匂わせないようにすることもあります。カターがケンカの仕方を学ぶシーンのシナリオを書いている時は、どうしても『ロッキー』(1976)のような映画が脳裏をよぎりましたが、観客の皆さんにこれまでにないものを観せるために、そういった影響は排除して、ドキュメンタリータッチで撮りました」と明かす。 小島監督が「カターが自分を襲った相手に仕返しをした後、ボロボロになった自分の拳から、相手の歯を抜く描写があったけど、あの発想は猛烈にすごい!」と伝えると、アキン監督は「それは、カターに戦い方を教えるトレーナー役の実体験に基づいたエピソードです。彼は本物のチンピラでファイター。彼に話を聞いていたら『いいか、実際に人をぶん殴る時はこうするんだ…… 』と言い出したので『ちょっと待った、その話は僕じゃなくてカメラの前でしてくれ』と伝えました(笑)」など、トークが止まらない。