「効率化」を叫び、労働時間の上限を獲得した若者たちの不幸が始まっている!? ――西野亮廣が見た、クリエイティブの現場の真実
クリエイティブの現場は、世間一般の時計を基準に動いていない
さて。 会社として動かす以上は泣いても笑ってもルールは守らなきゃいけないわけで、我々、CHIMNEY TOWNも色々と工夫しています。 というのも、クリエイティブの現場においては「長時間労働」というよりも、「営業時間」の問題があって、僕らは世間一般の時計を基準に動いていないんです。 それこそ分かりやすいところでいうと、イベントは土日(祝)がメインだし、会場の設営は、お客さんが会場を利用しない夜中にあります。 これに加えて、脚本(漫画家さんの場合ならネーム)は時間通りには仕上がらないし、僕らのように毎回新しいチャレンジをするチームだと、ほぼ毎日のようにトラブルは起きるし、あと、決定打は、僕ら海外でも仕事をしてるんです。 ちなみに、日本の朝7時はニューヨークの夕方6時なので、日本の皆さんが寝ている時間が、ニューヨークの働き時なんです。 日本時間の朝4時とか5時にミーティングが入っていたりするんです。 ニューヨークで「今日の17時までに契約を結ばないと、この話はナシ」みたいな場面がリアルにあって、「いや、日本時間の朝6時。皆、寝てまーす(涙)」という八方塞がりです。 これは本当に今の時代なかなか言えないんですけども、クリエイティブの現場では、「予定時間をオーバーしようとも、ここまでやりきった方がラクだ」と、ほぼ全員が思っている場面があるのですが、労働基準法をキッチリ守ると、それが叶いません。 それを突破するには、「役員になる」か、「別の会社の人になって『業務委託』という形をとる」ぐらい。 吉本興業に所属していた時に一番難しかったのがココで、担当マネージャーに対して「吉本の役員になってくれない?」とは言えないし、「吉本を抜けて、吉本と業務委託契約を結んでくれない?」とも言えないので、結構、クリエイティブよりの活動に制限がかかっていたんです。
CHIMNEY TOWNインターン生から『業務委託』がかなりいい
そんな中、CHIMNEY TOWNで僕の下でクリエイティブの現場に入っていたタケダというインターン生が、この春から、西野亮廣にベタ付きのAD的な立ち位置で『業務委託』になったんです。 CHIMNEY TOWNでインターン生から社員にならずに『業務委託』になったのは今回が初めてなのですが、これが、今のところ結構(というか、かなり)いいんです。 時間の制限を取っ払えるので、クリエイティブにブレーキがかからないし、ゴールデンウィーク中も次のプロジェクトの準備をグイグイと進められています。 もちろんタケダがCHIMNEY TOWNのスタッフに指示を出すのは、CHIMNEY TOWNの社員の営業時間が始まってからになるわけですが、(タケダがしばらく球を持っていようとも)僕としては今やっておきたいことをバッと吐き出せたらそれでよかったりするので、その類いのストレスが消えました。 まぁ、これはあくまで西野亮廣用のフォーメーションではありますが、雇用形態の最適解を探り続けないと勝ちきれない時代だなぁと感じています。 皆さんの会社はどんな感じですか? 西野亮廣/Akihiro Nishino 1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員196万人、興行収入27億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。また「えんとつ町のプペル」は、ミュージカルや歌舞伎にもなっている。
TEXT=西野亮廣