運筆が向上、テストも100点を連発!「視写」が発達障害の子にもたらした「驚異の変化」
コミュニケーションがとれない、勉強が苦手、学校では給食も食べられない……そんな課題を抱えた発達障害のA子。著者の長谷川氏が彼女に「視写」(お手本を写す学習法)を進めたところ、A子は地道に学習を続け、ついに驚くべき変化が現れた。『生徒に「私はできる! 」と思わせる超・積極的指導法』をもとにしたレポートの後編をお届けする。 【画像】死刑囚が「アイマスク」をするヤバすぎる理由 前編記事『発達障害、円形脱毛症、場面緘黙……「三重苦」の生徒を明るい子に変えた中学教師「驚きの授業」』に引き続き紹介する。
視写によって起こった「目覚ましい変容」
記事前半では「視写」の説明に多くを費やしてしまったが、 ・自閉スペクトラム症で場面緘黙の診断あり ・生徒や教職員とのコミュニケーションが難しい ・給食にはいっさい手をつけない こういった課題を抱えていたA子は、視写を始めてからどう変わっただろうか。 もちろん、視写を始めても、彼女に速く書けるわけがなく、最初の頃は、わずか1ページ視写するのに15分くらいかかっていた。 しかし、続けていくうちに運筆の速度がハッキリと向上し、11月には「漢字スキル」を使ったテストを5分弱で終えられるまでになった。しかも初めて100点を取り、それまでは見せたことのない笑顔を見せた。 1月には1ページ4分程度にまで視写にかかる時間が縮まった。 2月になると、漢字スキルのテストを「ほかの生徒の終了時点+1分」ほどで終了するまでに速度が上がった。そして3学期。A子はこのテストで100点を連発するようになった。 しかし、A子を待つ時間はいわば「A子のために設けられたもの」であり、この間、他の生徒はすることがなくなる。授業に空白ができてしまう。これはよくない。緊張感が乱れるばかりでなく、A子ばかりが贔屓されているように見えてしまい、教室の一体感が崩れてしまう。 そこで私は、ある簡単な工夫をした。漢字スキルを終えた生徒に、「先生問題」を出したのだ。テスト10問のうちの漢字の「同訓異字」や「同音異義語」を中心に、毎回2~3問ずつ出題したのである。たったこれだけのことでも、生徒は喜んだ。 教室内でA子が発する声は、次第に大きくなっていった。運筆が速くなり、学力がつくのと並行して、彼女の自己肯定感が高まっていったのは明らかだった。私の勤務校では、毎年3月に学年で演劇を上演するが、その舞台でもA子は、誰もが驚きの声をあげるくらい大きな声を出していた。 「人間は、変わる」 A子の成長を目の当たりにした周囲の子どもたちにも、その事実は明らかだった。